「病気や障害があっても家にいることで病気は生活の一部になる」という言葉に触発されて、外科医から緩和ケア医に転向した奥野滋子医師。「経済力」と「家族の介護力」があれば望ましい最期が保障されると思われがちですが実際は「濃厚医療」にさらされる危険をはらんでおり、逆に経済的に恵まれていなくても家族がいなくても、「これでよかった」と思える満たされた死を迎えることはできると伝えています。死は誰にでも訪れ、いのちにも医療にも限界があることを知り抜いたうえで、自分だけの最期を迎える「心の力」をもつこと。それをもてれば「ひとりで死ぬのだって大丈夫」と言います。

巻末に「この本で伝えたいこと20」と「病と死に向き合うための書籍」があります。
その中から、ひとつ。

*「人は生きてきたように死んでいく」と聞いて、「ろくな生き方をしてこなかったから孤独な日々を過ごし誰にも知られず寂しい最期を迎えるしかない」と考えてしまう人がいます。しかしその人が自分の人生は幸せだったと感じていたかどうかが大切なのではないでしょうか。地域の人や医療者など血縁以外と関係を結ぶことはおひとりさまにもできます。その人たちとの交流の中に新たな自分を発見して心豊かな人生を送ることも、そして満足して旅立つこともできるのではないでしょうか。

タイトル緩和ケア医から、ひとりで死ぬのだって大丈夫
サブタイトル
著者奥野滋子
出版社朝日新聞出版
ISBN9784022620460
出版年2021/02/05
サイズ文庫
価格748 円
概要3000人の終末期に寄り添った緩和ケア医が、「たった一人でも大丈夫」といえる最後の日々のあり方を、具体的な事例とともにアドバイス。病院でも在宅でも、病気と心を診る医師が、痛みへの対処法、家族や友人のかかわり方、病と死への向き合い方を綴る。
目次第1章 いのちの限界、医療の限界を知ろう
第2章 がんは本当に「不幸な病気」なの?
第3章 緩和ケアで「痛み」をとる
第4章 心へのはたらきかけがいのちを救う
第5章 在宅医療チームに支えられて自宅で旅立つ
第6章 家族が「すべきこと」と「してはならないこと」
第7章 その人らしさを支えるケア
第8章 悲嘆の中にある人たちのサポート