ご挨拶

令和5年6月10日

尊厳死協会はこれまで、治る見込みのない終末期における医療の自己決定権としての尊厳死が認められる社会の実現のため活動してまいりました。日本は終末期医療に関して自己決定する事前指示書、リビングウイルが法的に認められておらず、終末期医療の在り方についての議論も遅れており、尊厳死と安楽死の違いについても誤解されている方が多くいる状況でした。そんな中、いざというときに慌てないために、と「人生会議(ACP:アドバンス)」を繰り返し行い、お互いの死生観や価値観を共有し、自分の希望を書き残しておくことが提唱されるようになり、当会も会員の皆さんや一般市民の方々にリビングウイルとともにACPの普及啓蒙活動も進めてきました。
その一方で、コロナ禍といわれるコロナウイルス感染の流行が発生し、感染症状が重篤になっても病院に搬送できない、搬送困難事例が全国で頻発しました。病院に入院中に感染した場合は、本人や家族の希望があれば積極的治療がなされたと思いますが、施設などで感染した場合、家族の希望があっても搬送されず、施設内で積極的な治療もされずに亡くなるケースが多くあったと言われています。これまでは医療資源が十分にある状況であれば、尊厳死を希望しないと延命処置が開始される世の中でしたが、医療資源が乏しくなると本人が希望しても延命してもらえなくなることが認識され、実際社会の高齢者や終末期の医療に対する認識も変化しているように感じられます。
このような社会情勢の変化を検討しながら、終末期における自己決定、リビングウイルが保証される社会の実現に向けて活動を進めてまいりたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

日本尊厳死協会 四国支部
支部長 西口 潤

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