LW(リビング・ウイル)のチカラ③

まさに“藤田ファミリー”による、法律と司法の藤田総合事務所


お勧めする任意後見制度と
リビング・ウイル


日本尊厳死協会東北支部理事(宮城県)
藤田 紀子

A子から「母が遺言を書きたいと言っているので話を聞いてほしい」と頼まれ、母親が入所している施設に行こうと思っていた矢先、母親の容態が悪化して集中治療室に入ったという。

A子とともに集中治療室の母親のベッドのところへ行くと、管だらけでただ息をしているだけ。A子が母親に話しかけて

「お母さん、財産は全部私にくれると言っていたよね、弁護士さんに来てもらったからお母さんの考えを話して」と言ってもまったく反応なし。

私はこのような状態で遺言作成はとても無理ですよとA子に諦めてもらう。

自分が認知症になって、とても自分の財産を管理できなくなったときは、後見人を選任してもらって後見人が財産管理をするが、裁判所が指定する公的な後見人(司法書士とかケアマネージャーなどが選任されることが多い)ではなくて、自分がまだ正常な判断ができるうちに自分の知った信頼できる人を予め後見人に指定することができる。

任意後見制度といって、不動産や預貯金の出し入れだけでなく、医療契約、施設への入所など身上に関する事柄を自分に代わってやってくれる人を予め選び、その人(後見人になってくれる人)とともに公証人役場に行って公正証書にしておくのであるが、私は広くこの制度を勧めている。

私は夫の母が末期の肺がんで入院し、まったく意識がなくなっているのに、なんとか延命しようと医者が母の身体に乗って心臓マッサージをしている姿を見て、私はこんな状態になりたくないと思い、早々と尊厳死協会に入会し(登録番号は00098096である)2019年に作成した「私の希望表明書」を常に持ち歩いている。

遺言でも任意後見契約でも、自分がボケた後ではそういうことをすることはできない。しかし、いつ自分がボケた状態になるか予測がつかないことが多い。人は年を取るにつれて次第に物事を判断する能力が衰えていくことは避けられない。

自分の終末期医療に関することも、元気なうちに考え、尊厳死協会に入会してリビング・ウイルと「私の希望表明書」を作成しておくことを強く勧めたいと思っております。

(藤田総合事務所 所長)

仕事中も、日々の暮らしにも、常に持ち歩く当協会の「私の希望表明書」
藤田紀子副支部長と夫君の宙靖(ときやす)氏