ご挨拶

【九州支部長就任のご挨拶】

このたび、偉大な先達であられる満岡聰先生の後を継ぎ、日本尊厳死協会九州支部の支部長を拝命いたしました、熊本で小さなクリニックを営んでおります清藤千景と申します。

これまで満岡先生は、広い視野と深い慈愛をもって、九州全体に「尊厳ある生と死」の文化を根づかせてこられました。その背中を見てきた一人として、まだまだ未熟ではございますが、バトンを受け取り、心を込めて務めさせていただきたいと思っております。

私はこれまで、地域の「かかりつけ医」として、患者さんの生活に密着し、外来での診療や、訪問診療を通じて、日常的な健康管理や病気の治療などに携わらせていただいてきました。その中で、医療や制度だけでは支えきれない「小さな声」が、日々の暮らしのなかにはたくさんあることを知りました。誰かの一言に救われたり、そっと寄り添うまなざしに支えられたり、そんな営みのなかにこそ、「その人らしさ」や「尊厳」があると私は信じています。

「尊厳死」という言葉には、時に誤解や不安が伴うこともあります。けれど私たちが目指しているのは、「死を選ぶこと」ではありません。どんな状況にあっても、その人の想いや生き方が大切にされ、最期までその人らしく、より良く生ききること――それこそが、私たちの考える「尊厳ある生と死」のあり方です。

加えて、今後予測される南海トラフ地震など、自然災害への備えも急務です。人生の最終段階にある方々が、災害時にも「人としての尊厳」を保てるような体制やつながりを、平時から築いておくことの大切さを、改めて感じています。

九州という多様で豊かな地域で、それぞれの土地の文化や想いを尊重しながら、「いのちの終わりを、自分で選び、語れる社会」を目指して、皆さまと共に歩んでまいります。

どうぞ、あたたかいご支援とご指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

令和7年6月30日
日本尊厳死協会九州支部 支部長
清藤 千景

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