地方こそ「在宅医療」

仙台地域の「在宅療養支援診療所」の割合は、全国14ある政令指定都市では14位。つまり、ビリです。では仙台市の「在宅で最期を迎える方」の比率はどうでしょうか。なんと、政令指定都市のトップクラスです。全国で約6割の方が在宅で最期を迎えたいと希望していますが、仙台地域では17.7%の方が自宅で最期を迎えています。全国の平均は13%。仙台では、およそ三人に一人が自分の願いが適った人生の締めくくりになっているというわけです。

この不思議な理由について仙台市の担当の方に尋ねたところ、「数は少ないが、一療養所あたりの看取り者数が多い」「受け入れ診療所が専門化し内容が充実」「在宅医療を支える介護を含めた組織の充実と連携」「病気の予防と健康診断(※筆者注 全国に先駆けた集団レントゲン検診など)に力を入れてきた歴史と伝統」「つまりは“仙台の文化”とでもいえましょうか…」。

このような答えが返ってきました。「在宅医療」を始めから無理と考えずに、かかりつけの医師や地域包括支援センターなどに、まずは自分の希望を話してみましょう。躊躇や遠慮は禁物です。

仙台市だけではありません。昨年の「日本リビング・ウイル研究会東北地方会」では、岩手県北上市の『わたしのきぼうノート』を核とする、全国的にも先進的な活動の実践例が紹介されました。みんなで、人生の心づもりを考えましょうと、行政機関や医療・介護施設、そして町内会をはじめとする地域の住民の誰でもが、自発的に参加できる取り組みの実施例です。

地方の暮らしは、大都市部に比べ、お互いの顔が見えやすい身近な関係です。それだけに、声を出せば、希望を伝えれば、自分や家族の共通の思いや願いが、地域では実現する可能性が高いともいえます。一人で、あるいは家族だけで抱え込まないで、かかりつけ医や地域包括ケア支援センター、市町村の担当課などに希望を伝えてみて下さい。

今回の「春の公開講演会『在宅医療』」では、全国注目の実践例に懸命に取り組む当事者の専門家から詳しく話をうかがえるまたとない機会と思っています。

(支部長 阿見孝雄)