LW(リビング・ウィル)のチカラ②

コロナワクチン接種の様子を再現する
山川真由美東北支部理事(右)

コロナワクチン接種に思う

日本尊厳死協会東北支部理事(山形県)
山川真由美

医療従事者からスタートしたワクチン接種の進行は、自治体による差が大きいようです。山形県では関東圏に比べると高齢者への接種は早く始まりました。

高齢者への接種の予約開始が間近となった頃のことです。ある病院で感染対策の統括をしている医師のところへ初老の紳士がやってきて、「私に早くワクチンを接種できるよう、取り計らってください」と分厚い茶封筒をグイグイ押し付けてきたとのこと。中身は大勢の福沢諭吉先生でした。もちろん、彼の望みは叶うわけもなく、丁寧に説明してお引き取り頂いたことは言うまでもありません。

ワクチンの集団接種は受ける方も大変ですが、接種する側の苦労も計り知れません。そのごく一部を経験する機会がありました。

ある自治体の高齢者を対象とした会場では、これもやはり初老の男性が、接種担当の看護師を見て「なぜ看護師が注射するんだ!医者が注射するんじゃないのか?俺は医者の注射しか受けない!」と騒ぎ出しました。職員の説明にも聞く耳を持たず、「時間の無駄」と判断した問診担当の医師が急遽交代して接種し、流れが滞らずに済みました。

医師・看護師それぞれの専門や得意分野にもよりますが、コロナワクチン接種の手技である「筋肉注射」は、実際は医師よりも看護師の方が上手いことが多いです。もしかするとこの男性は物凄く痛い注射をされたかもしれません。

人に対してだけでなく、無駄にせぬようワクチンの扱いには非常に気を遣います。保存用冷凍庫内の温度や解凍してからの時間と温度等、少しでも決められた値を超えないようピリピリします。接種会場は25℃以下にするため強く冷房をかけます。何時間も座って受付・説明・問診・接種などを担当するスタッフには寒くて過酷な職場です。

本人をはじめ、関わる多くの人の念入りな準備やシミュレーション、そして明確な意思(自己主張?)がなければワクチン接種は出来ません。ふと考えると、「準備・シミュレーション・意思」は、リビング・ウィルに不可欠な要素です。くだんの2人の男性には是非ともその準備や自己主張のパワーを、自身の最終段階のために役立ててほしいと願わずにはいられません。

赤湯温泉のある山形県南陽市の八幡宮に参拝
春スキーや夏スキーも魅力な霊峰月山にて