LW(リビング・ウイル)のチカラ⑤


生活習慣の改善などで「健康寿命」をのばし、最期まで自分らしく生きる。

日本尊厳死協会東北支部理事(岩手県)
齊藤 和好

御存じのように、当協会は、1976年の創設以来、安らかに人間らしく死ぬ権利を求める「尊厳死の宣言書(living will)」の登録・保管をすすめ、自己決定権を確立し、その社会的合意を目指して参った団体であります。

因みに、当協会の東北支部大会(岩手県)が、2006年9月に盛岡市で「より良く生きて、安らかな死を迎えるため」のテーマのもとに多くの参加者を迎え開催されたことがありました。

さて、自立して日常生活を送ることが出来る「健康寿命」が、厚生労働省によると、男性72.68歳、女性75.38歳となり、過去最長を記録したようです。
一方では、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大に伴って、外出や交流する機会の自粛を余儀なくされる状況が続いております。そのため、健康寿命をさらに延ばすには、一人一人の心がけとともに、生活習慣の改善を促す環境作りが、よりいっそう欠かせないようであります。

日本人の死因の第1位は、がん死であります。近年、胃がん死の第1位を抜いて、肺がん死がトップの座についたようです。そのうち、“たばこ”が原因となっているものが、男性の69.2%、女性の18%を占めています。手術後の生存率を順に述べてみますと、肺がん35%、胃がん67%、大腸がん71%、子宮頸がん76%、乳がん92%となります(「医学概論 改訂7版」中外医学社、「やさしいがんの知識2021」がん研究振興財団)。

最後になりますが、1971年、我が岩手医科大学付属病院の第1外科に入局された大先輩の外科医H先生の「人生の最終段階」についての考えを一例として御紹介いたします。
先生は、1983年頃、風邪気味で全身状態が悪化し、呼吸困難も酷くなったため、その後は公的な仕事はやめられましたが、1年後に静かに49年の生涯を終え、天に召されました。先生の死に対する態度は、最後まで外科医、研究者、キリスト教者として、与えられた御自分の時間を最後まで立派に生き抜きました(「尊厳死」)。このような先生の死に対する立派な態度は、我々に人間、病気、医学、宗教、死等について、普段は全然考えない、あるいは、避けて通る種々の問題を提起してくださいます。

(岩手リハビリテーション学院学院長・岩手医科大学名誉教授)

学院長の齊藤和好支部理事を囲む岩手リハビリテーション学院の学生さんたち
歴史と伝統ある岩手医科大学の新、岩手医科大学附属病院