LW(リビング・ウイル)のチカラ⑥


「在宅医療」にも積極的に取り組む
石澤 誠支部理事

日本尊厳死協会東北支部理事(青森県)
石澤 誠

自宅での「がん」の看取りについて

終末期医療について、医療関係者として患者の皆様に知ってほしいことがあります。
がんの痛みを緩和する緩和治療が発達し、介護保険を併用して在宅でのがんの看取り(終末期医療)が普通にできる時代となりました。

がん化学療法を何回か受けて、それを終了した方がBSC(最適な維持療法)と緩和ケアのために病院から当院にも紹介されてきます。
私から「最期はどうして欲しいですか」と患者さんに尋ねると「意識が戻らないようになったら、延命はしないで欲しい」と言われることが多くあります。また患者の家族は「延命治療はいらないけれど、とにかく苦しまないようにしてほしい。自然なかたちで見送りたい。でも点滴くらいは行って欲しい」と言うことがあります。「最期の場所はどこをご希望ですか」と尋ねると「自宅で」と言われる方が結構あります。私はまずは患者側のストレートな希望をよく聞いて治療関係を作ることから始めることにしています。

青森は寒い地方のため、お一人様の在宅での看取りには滅多に遭遇しません。家族が同居していることがほとんどです。必ずベテランの訪問看護師に治療チームに参加してもらいます。しかし、それでも老々介護の場合は終末が近づくと配偶者が心身ともに疲労して医療機関に患者を移して欲しいと言い出し、救急車を呼んでしまう場合を少なからず経験しています。

当院などの有床診療所では急な変更があっても入院することが可能です。最近はコロナ禍の為に病院の入院が特に慢性期の疾患では難しい状況です。しかし、弘前市では中核となる病院が4月から地域医療支援病院に指定され、その中の数ベッドを在宅医療の急変時に利用できるようになります。いまはその活用に大きな期待を持っています。

治療側としては在宅医療の場合は急な変更にも対応できるように複数のプランを立て、それを患者側に提示しながら実施しています。

「在宅医療」も選択の一つになるのではないでしょうか。

(石澤内科胃腸科 理事長・院長 弘前市医師会副会長)

弘前城から望む故郷の名峰、岩木山
入院もできる18のベッドを持つ有床診療所「石澤内科胃腸科」