LW(リビング・ウイル)のチカラ⑫

改訂された当協会の「リビング・ウイル」は良く練られた内容と、その所持を勧める池田 健院長


自分は生かされている、と感謝。

日本尊厳死協会東北支部理事(岩手県)
池田 健

 私は今年で74歳。実は、この歳まで生きていられるとは自分でも考えてもいませんでした。というのも我が家の家系の男子は短命で、父も65歳で他界。私は65歳を私の「死に時(人生の終わり)」と定め生活を送ってきました。ですから38歳の時に先妻を亡くした苦い経験などから、66歳以上生き永らえるにあたり気持ちの変化がありました。それは「自分は生きている」というより、むしろ「自分は生かされているのではないか」と感じたことでした。

 おそらく昔に生きた人は「生けるものは、常に死と隣り合わせ」、「死は身近にある」と考えていたのではないかと思います。現代人の多くは果たしてどうでしょうか?日本においては、社会基盤の整備も進み、医療も皆保険、介護も保険で安心?こうした安全・安心感がむしろ「死」というものを人の思考から遠ざけているようにも思えます。病気になっても病院に行けば何とかなる、自分は元気になって戻ってくる。実は、戻ってこれたその時は運がいいのです。死神はいつもそばに居ます。昔の人はそのことをよくわかっていたのではないでしょうか。生きているそれ自体に「感謝」せずにはいられません。

 何時どうなるか分からないと感じた時こそ、自分の意思を伝える手段を保持し、簡便に相手方にお知らせできるリビング・ウイル(LW:終末時における事前指示書)を常に手元に置いておきたいものです。多くの方が「私は、ポックリ行きたいわー」と内心思っていても、どれほどの人々がその夢を叶えることできることか。昔、当協会の副理事長の長尾和宏先生が話されていた「溺れて死ぬ」のではなく、「枯れて死ぬ」という言葉が脳裏から離れません。過度な治療の中で迎えるか、老衰で静かに去るか。考えてみれば、植物・動物をはじめとする自然界の多くは「枯れて消滅する」カタチになっていると思えます。

 当協会のリビング・ウイルは最近の情勢を踏まえ、本人を中心に署名立会人、代諾者の存在など良く練られて作成されています。これを利用しない手はありません。会員証は常時携帯し、LWノートも家の見つけやすい場所に保管。ところが、認知症が進行した場合や何らかの原因で意思疎通が図れなくなった場合など、まさにその時に限って横やりを入れる人が出現しないとも限りません。常日頃、夫婦間は勿論のこと子や孫、かかりつけ医、近しい方々に自分の終末医療についての話をしておくことが大切ではないでしょうか。そして、尊厳死協会の存在が、その人の人生の一助となってくれるのではないでしょうか。

 最後になりますが昨年末に、長年支部理事を務めた岩手県の菅原正様がお亡くなりになりました。菅原様からは自らLWを実践しつつ多くのことを教えて頂きました。感謝申し上げますと共に心よりご冥福をお祈りいたします。合掌。

石割桜の前に立つ池田先生
今年も逢えた!みちのく盛岡のいわばシンボル「石割桜」の前に立ち。
さくらと線路沿線の池田歯科医院のお写真
鉄路とは人生の道を思わせる。池田歯科医院の看板と満開の桜の花。