透析を先送りできないか

相 談

84歳の夫は、心不全ステージⅣで腎機能が低下してきているので、そろそろ血液透析を選択する日が近いと主治医から伝えられました。DVDを見せてもらい夫は透析に前向きですが、最近は疲れやすく動作もゆっくりで物忘れが多くなりました。心臓がずいぶん弱くなっているので週に3回、長時間拘束される透析をいつまで続けられるか心配です。そして、一度始めた透析は途中で止めることが出来ないと聞きます。
しかし、前向きな夫の気持ちを引き止めることはできません。
私達は二人暮らしで子どもは遠方に暮らしています。私は降圧剤や腰の痛みなどで通院していますので、いつまで手助けできるか自信がありません。
食事の改善や身の回りの手助けは何とかできますので、透析をもう少し先送りにできないものでしょうか。

(80歳 女性)

夫の前向きな気持ちを尊重しながら先送りすることは難しいでしょうか?

腎不全代替療法は命を延ばすためだけの治療法ではなく、残された時を有意義に過ごすためとも捉えられていますので透析を始める、始めないを決めるに当たっては本人の価値観や人生感が反映されます。しかし、高齢者が透析を始める時は、共に支える家族の気持ちも尊重されないと継続が難しくなります。

心不全ステージⅣで腎機能が低下してきていますので、先送りできる病態であるかは主治医に確認してみましょう。

そして開始、不開始に関わらず、今後の病状の進行や起こりうることなどについて十分な説明を受けることをお勧めします。

なぜ心臓病で透析が必要になるのでしょうか?

心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を担い、腎臓はその血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排泄するフィルターの役割を担っています。心臓が弱まると血液を送り出す力が弱まり、腎臓に十分な血液が届かなくなります。そうすると腎臓の働きが弱まりフィルターの役割が低下して心臓に負担がかかるという悪循環が生じます。心不全の患者さんの透析治療は心臓への負担を最小限に抑えるために行います。

透析を選ばないとしたら他にどのような方法がありますか?

腎不全代替療法は血液透析と腹膜透析、腎移植がありますが、もし、透析をしないことを選択をした場合は、保存的腎臓療法(CKM)という選択肢もあります。これは、超高齢者や重度の認知症、他の病気の併発などで透析を行うことが難しい場合は透析を受けずに、残っている腎臓の機能をできるだけ維持しながら薬物療法や食事療法を最大限に行い、苦痛な症状を和らげる緩和ケアを中心とした医療に移行していく考え方です。

LWや希望表明書などは尊重してもらう事ができますか?

本人のLWと希望表明書を基に人生の最終段階を、どこで、どのように過ごしたいか家族間で再確認したことを主治医や看護師、管理栄養士などの医療従事者チームにお伝え下さい。重い決断になりますので、理解し納得するためには時間をかけて「今はこれで大丈夫だけれども、このような状態になったらこうしてほしい」などということを医療従事者と事前に合意書を取り交わしておくと安心です。そのためには日頃から医療従事者と、気軽になんでも相談できる信頼関係を築いていくことが大切です。

一度決めた方針は変えられないのでしょうか。

病状や環境の変化などによって気持ちが変化することがあります。「一度決めたから変えられない」ではなく、疑問や不安に思ったことは遠慮なく申し出て下さい。その都度話し合いをしながら方針の見直しをして行くことをお勧めします。

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