東北支部リレーエッセイ「LW(リビング・ウイル)のチカラ⑰」


緩和医療の新たな試み

日本尊厳死協会東北支部理事(山形県) 
仁科 盛之

最近の人口動態調査によりますと、全国的に人口の流動化がみられ、特に東北地方の人口減少、高齢化は、病院に携わる私達にとって医療環境に及ぼす影響が重大で、医療機関の運営、医療の質に直面することは避けられないと考えております。

山形県、特に置賜(おきたま)二次医療圏に転じてみれば2010年をベースラインとした場合、人口減少率は30%にも達し、75才以上の後期高齢者の割合は2030年にピークを迎えその後減少、直近のデータでは 総人口は20万人を切り、米沢市の人口さえも8万人を割り、7万6千 人となっております。

この変化については各市町村単位で状況が異なる点が見られますが 特に医療、介護について地域毎に考える必要があり、高齢者の特性により医療状況が多様に変化することを考慮し、その地域に適応する地域包括ケアシステムが必要となります。 また同様に医療圏に高度急性期医療、急性期医療、回復期医療、慢性期医療といったその地域に合致する地域医療構想が重要と思います。
さらに各医療機能の診療体制については、病態などデータ(病名や治療内容により一日あたりの入院費用を定額で計算するDPCなど)に基づいて明確化しつつあります。

以上の事を踏まえ、米沢市を中心とした地域医療の在り方について検討しました。2016年当時の米沢市立病院、三友堂病院の建物の老朽化、常勤医の高齢化、医師を含めた医療スタッフの人材確保等など今後の医療について、当時の米沢市長と話し合い、議論を重ね、米沢市の現状を共通認識し医療の質を担保し、どう医療機能を確保するかが課題でありました。
その課題にどう取り組むかを検討し、米沢市の急性期医療(癌診療を含む)の米沢市立病院と三友堂病院が医療機能を分担し、新しい病院を再編成するとの結論に至りました。

米沢市立病院は急性期医療(癌診断・治療を含む)を担い、当法人は慢性期医療、人間ドックを含む検診事業、慢性腎不全透析医療、緩和医療など米沢市立病院の後方支援に専念することで両病院の医療機能の効率を図るため、現在の地である米沢市立病院の隣に当院が新築移転することにいたしました。
137年もの長きに歴史を築き上げた「米沢中央6丁目」の地から離 れることは、苦渋の決断ではありましたが、将来を見据え決断いたしました。

2018 年より両病院基本構想を立ち上げ両病院で議論を重ね、2021 年6月に新病院の建築着工、2023年10月19日に落成し、11月1日に両新病院がともに診療を開始しました。
2005年5月に緩和病棟を開設以来、種々の緩和医療のノウハウを積み上げ、リビング・ウィルの精神を反映させながら患者様の立場に身を置き、高い評価を得た緩和病棟を新病院7階フロアに設置しました。 その新たな緩和病棟を、医療スタッフ一丸となって今後の当地方の緩和医療の核となるべく、地域の方々にさらに信頼されるよう努力し、質の向上に努めてまいります。
会員の皆様におかれましてはよろしくご指導、ご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

(一般財団法人三友堂病院 理事長)

米沢市立病院と病棟を接続、慢性期医療に特化する三友堂病院の新築移転
長年の緩和ケア病棟の診療ノウハウを生かした7階緩和ケアフロア