緩和ケアに対する関心の高さ!

リビング・ウイル(終末期医療における事前指示書)の 項目に『私の心や身体の苦痛を和らげるための緩和ケアは、医療用麻薬などの使用を含めて充分に行ってください。』と 記されています。緩和ケアに対する関心は高く、多くの相談が寄せられています。
相談事例の紹介とともに緩和ケアについてお伝えします。

【相談事例】
  • がんの末期で貼り薬の効果がなく、舌下錠になったが 吐き気が強く辛い。痛みを抑えるた めにモルヒネなどを試してみたいが、医師に尋ねてもよいだろうか。今後、受診が難しくなった時には在宅診療も 考えているが、緩和ケアは在宅でも可能か。 
    (80代 男性)
  • 高齢の父は、すい臓がんの末期で在宅で緩和ケアを 受けている。声をかけると頷いたり手を握り返す。幸い痛みもなく、苦しい時は酸素を付けたりしている。 浮腫があるので点滴を外す予定。医師にあと数日と言われたが苦しみなく見送りたい。                             
    (60代 女性)
  • 4年前にALSと診断された60歳代の弟は、3年前から人工呼吸器をつけているが、呼吸が苦しいと訴える。体は動かないが、左手の中指のみで意思疎通をとっている。医療用麻薬も使っているが改善されているかどうかも分かりにくく、主治医は問題なく現状維持だと言うが、もう少し痛みを安らげる時間をふやしてあげたい。
    (60代 女性)
  • 8年前に脊柱管狭窄症で手術した。その後は調子よかったが、3年前くらいから痛みとしびれが酷くなっている。麻酔科で神経ブロックなどもしたが効果なく、痛みで何もできず無力感に苛まれる。医師よりあなたにあげる薬はないといわれてしまった。痛みをとれる緩和ケアをしていきたい。        
    (80代 女性)
  • 8年前から難病による心臓や腎臓にダメージがあり、心臓はペースメーカーをいれているが腎臓機能の低下が進んできている。難病との闘いに疲れた。終末期には人工透析をする体力もないのでやめたいが、痛みで苦しいおもいだけはしたくない。                          
    (80代 男性)
【我慢しないで早めに相談を】

厚生労働省は「がんと診断された時から治療と並行 した緩和ケア」を推奨し、病状の進行具合に関わらず、早い段階で緩和ケアを開始することを勧めています。
痛みを我慢することはないのです。
緩和ケアは、QOL(生活の質)を向上させ穏やかな日々を送る上で大切な治療法です。
本人だけではなく、家族のつらさも和らげます。

【がんの方だけが対象なのでしょうか】

緩和ケアは、がん患者を中心に行われてきましたが、近年は、がん以外の病気に対する緩和ケアも重要な医療とされ、緩和ケア科やペインクリニック科、痛みの専門外来などの専門機関で広く行われるようになりました。

【緩和ケアはどこで受けられるますか】

⚪︎治療のために通っている病院の外来、緩和ケア外来
⚪︎入院している一般病棟、緩和ケア(ホスピス)
⚪︎住みなれた自宅、介護施設などで在宅訪問診療
緩和ケアは医師や看護師、薬剤師、介護士だけではなく心理士や栄養士など様々な職種がチームで支えてくれます。お一人暮らしの方も「在宅」で受けることは可能です。

【費用が高額になるのではないかと心配です】

入院と在宅を選択しても、医療費は健康保 険などの「公的医療保険制度」でまかなえます。
高額にな る場合は「高額療養費制度」で負担が軽減できます。
入院 では差額ベッド代や食事、諸雑費など、病院によって違います。
病院の相談窓口、ソーシャルワーカーに尋ねてみましょう。
在宅で支 えていただく場合は、公的医療保険制度の他に介護保険制度が適用されます。

【緩和ケアでは麻薬を使うとききますが、依存性や副作用が心配です】

医療用麻薬は、専門医によって適切に使用が行われます。
適切な使用によって依存性が生じることはありません。
主な副作用に眠気や吐気、便秘などがありますが、適切な対応方法があります。
医師と相談しながら痛みのコントロールをしていくとよ いでしょう。
痛みを緩和する薬は、麻薬の他にもたくさんあります。
病 状に合わせて調節されるので我慢しないで早めに 相談しましょう。

【どのように伝えるとよいですか】

⚪︎我慢しないで「つらい」と感じたら早めに積極的に伝えましょう。
⚪︎痛みを正しく、自分の言葉で伝えましょう。
⚪︎リビング・ウイルを元にACP (人生会議)を行いチームで支えてもらいましょう。

豆知識

緩和ケアとは
生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し、的確に評価を行い対応する。 苦痛を予防し和らげることを通してQOLを向上させるアプローチである。(WHO緩和ケアの定義より)

医療用麻薬
痛みの治療に使用する麻薬で、オピオイド鎮痛薬といいます。
痛みを伝える神経に作用して痛みをやわらげるお薬です。
少量より始め、痛みに合わせてあなたにあった量を決めていきます。
医師の診察のもとで使用する「医療用麻薬」は、有効性・安全性が高く、
中毒や依存も生じないことが科学的に証明されています。

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