痛みは、他人に理解されにくいものです。
長引くと QOL(生活の質)を低下させるだけでなく、メンタ ルをも病み、生きる気力を失い、死を望むこともあ ります。
今回の事例は、糖尿病による神経性疼痛に 苦悩し、自然死を願うメール相談です。相談者は緩 和ケア専門医である協会顧問医のアドバイスに従 い、疼痛緩和センター(ペインクリニック)の治療 を受けた結果、徐々に痛みが軽減し新たな治療に 取り組み始めています。
痛みの治療を諦めかけて いる方々の手がかりになれば、との思いを込めて 取り上げました。
私は二型糖尿病を 48 歳で発症し約 20 年にな る 60 代の女性です。インスリン注射を 3 種、1 日 5 回打っています。糖尿病以外にも様々な病気を抱えています。
6 年前から神経障害疼痛で四六時中、 足に疼痛があり薬も効きません。糖尿病内科でも整 形外科でも私の痛みをわかってくれません。歩行もま まならず毎日ベッドに寝たり座ったりで辛いです。イ ンスリン注射を止めて自然に暮らし、死に至れば良い と考えています。毎日、辛くて家事ができず、主人に も負担をかけて申し訳ない気持ちです。
痛みはいつからどの部位にあり、どんな痛み で、どうすると痛いのですか。痛みのためにできなく なったことは何ですか。
痛みは 6 年前から。最初は重くるしいだるさ。次第 に疼痛に変わりました。足の先に感覚がなくても痛み はあります。まるで骨の中から剣山で刺されているよ うです。足の裏は布団を履いているようにふらつきま す。痛みで家事ができず、介助や杖なしでは歩けませ ん。見た目には普通に見えるため他人に痛みがわかっ てもらえません。医師は痛みに対する薬は出している と言い、貼る痛み止めやオピオイドの薬を希望しても、 がんとは違うので出せないらしいのです。
足の痛みが糖尿病によるものでしたら、血糖 をコントロールすることが一番です。具合の悪いとこ ろがたくさんあるので、痛みの治療は簡単ではないでしょう。
受診先の病院には疼痛制御センター外来(麻酔科)がありますので、そこで相談してみてくださ い。
痛みの強さは血糖値と異なり数字で表すことができ ません。痛みは本人にしかわからないものです。理解 してもらいたくとも理解してもらえるものではありません。
家族の支援だけではなく、デイサービスでリハビリをするなど生活習 慣を見直したり、家族以外の人と交流すると痛みは軽 くなります。
疼痛制御センターはありますが、1 度も紹介 してもらっていません。がんの方しか紹介してもらえ ないのかと思っていました。糖尿病代謝内科の予約日 なので医師に聞いてみたいと思います。 介護保険は 毎月払っていますが、使い方が分かりません。 区役 所に聞いてみます。
「診察してもらって疼痛制御センターに紹介 してくれるか聞いてみます!」ではなく、紹介して欲 しいと自分の気持ちをきちんと伝えることです。紹介 してもらえなければ、その理由を確認することです。 処方されている薬について、なぜその薬が必要なのか、 効果や副作用について、きちんとした説明を受けてく ださい。慢性化した痛みを楽にするためには生活の見 直しが一番大切です。
医師の前に出ると、気を悪くして診てもらえ なくなるのが怖く、萎縮していましたが、アドバイス 通りに予約なしで行ってきました。
すぐに紹介状を書 いてもらい、当日に疼痛制御センターで診てもらいました。
問診のあとすぐにブロック注射、 硬膜外麻酔を してもらいました。背中からの注射で緊張しましたが、 痛みが軽くなり今日に至っています。
夜になると痛み が戻りますが、ロキソニンを飲んだら楽になります。 足の裏のふわふわ感は糖尿病のせいで、杖が要りますが、痛みが軽くなり嬉しいです。
相談して良かったです。
今日、3回目の硬膜外麻酔をしていただきました。その後、痛みが少し出てきたので、1 泊 2 日で入院し て片方の足にブロック注射をし、それが効くのかを試 したいと提案がありました。
痛みが少し緩和する方に かけたいと思いますが、レントゲンを撮りながらの治 療になるようで怖い気がします。
新しい治療を提案された場合、直接、提案し た医師にその目的や効果、副作用や合併症などについ て説明を求め、納得してから治療を受けるようにしてください。
入院するとかしないとかの問題ではない と考えます。
自分の言葉で伝えることができるように なってきているので、第三者に相談するのではなく自分で解決することです。
※以上で相談は終了しました。
自分で解決する力を付けながら、痛みから解放された日常を送っていることを願わずにはいられない相談でした。
豆知識
疼痛制御センター(ペインクリニック)
症状や身体所見から多角的に痛みの原因を診断し、薬物療法だけでなく神経ブロックを始めとする各種の治療法を駆使して痛みを軽減・消失させQOLを向上させます。
また、慢性痛、神経の障害やがんによる治療困難な痛みでは、医師、看護師、薬剤師、理学・作業療法士、臨床心理士など痛み診療に関わる多くのスタッフと連携して最適な治療へと導いていきます。
ペインクリニック学会HP専門医
https://www.jspc.gr.jp/shisetsu/senmonimap.html