治療法を決められない

【事例】

78歳の夫は、3週間前に突然の右側腹痛で救急搬送。圧迫骨折と診断され、モルヒネ投与で痛みは緩和され服薬を継続中。諸検査で肺がんのステージIVで圧迫骨折は骨転移と診断された。手術、放射線治療はできないが、免疫チェックポイント阻害薬有効性60%、化学療法などの治療法を提案された。次回の受診までに決める様に言われ、本人は、苦痛を伴う治療は望まないが、少しでも長生きできるなら可能性にかけてみたいと言っている。提案された中で比較的可能性が高い免疫チェックポイント阻害薬を試してみたいと思うが、モルヒネで痛みをコントロールできているためか、食欲はあり普段通りに生活ができているので、治療をしない選択もあるのではないかと迷う。

【回答】

がんと診断され、気持ちが揺れ動いている時に治療法を選ぶようにと言われても難しいことですね。
本人が可能性にかけてみたいと言う、免疫チェックポイント阻害薬を試してみてもよいと思います。副作用は皆無ではありませんが、治療中に体調の変化を感じた時は、治療の見直しを申し出ることこともできます。
また、今はモルヒネの内服薬で痛みをコントロールできているので、緩和ケアで今まで通りに過ごす日々を大切に生きる選択も一つの方法です。
治療法を決めるにあたり、悔いを残さないためにも、担当医の意見をもう一度聞いてみましょう。

聞きたいことはメモして

🟡自分の病状 🟡進行度
🟡なぜその治療を勧めるのか
🟡副作用による身体への影響
🟡治療の見通しなど

それでも決めかねる時は、セカンドオピニオンをお勧めします。

セカンドオピニオンは、担当医を替えたり、転院することではなく、あくまでも専門医の意見を聞くことです。担当医の信頼関係を損なうのではないかと躊躇するかもしれませんが、意見を参考に、病気への理解が深まり、自分らしく納得する治療を選択することができるようになります。

セカンドオピニオンの手順

  • 現在の担当医に、セカンドオピニオンを受けたいと伝え了承を得る。
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  • 紹介状(診療情報提供書)や、血液検査や病理検査・病理診断などの記録、CTやMR|などの画像検査結果やフィルムを準備してもらう。
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  • セカンドオピニオン外来に連絡して、セカンドオピニオンを受けるために必要な手続き(受診方法、予約、費用、診察時間、必要な書類など)を確認。
(基本的に公的医療保険が適用されない自費診療で、病院によって費用が異る)
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  • 聞きたいことをあらかじめ事前に理し、できるだけひとりではなく信頼できる人に同行してもらうと安心です。
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  • セカンドオピニオンを受けたら、現在の担当医に結果を報告し、これからの治療方針について再度相談。
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  • セカンドオピニオンの結果、セカンドオピニオン先の病院で治療を受けることになった場合には、あらためて担当医に紹介状を書いて引き継いでもらう。

豆知識

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞がリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する薬剤です。免疫学の急速な進歩により、免疫療法はがんに対する有力な治療法となりました。その一方で、すべての患者さんに有効な治療ではなく,急激にがんが進行する場合もあります。また,免疫に関連した副作用(間質性肺炎、甲状腺や下垂体などの機能低下症,大腸炎,皮膚炎,肝炎,脳脊髄炎など)を起こすことがあり,注意が必要です。
(参照:日本肺癌学会より)

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