【情報BOX】「リビング・ウイル」と「献体」知っていますか? 話していますか?

「人生の最期をどう過ごしたいか」そして「死んだ後はどうしてほしいか」

「リビング・ウイル」も「献体」も、本人の意思が尊重されることはもちろんですが、本人がどれほど理解できているか、そして終末期にそばにいて見守り、遺される家族たちがその意思や、情報や、仕組みをどれほど理解しているか……これによって、本人の安心はもとより、家族の心の持ちようは大きく変わってくると思います。

◎知ること

自分自身、親、配偶者など、その時を迎えるのはまだ先のことと思っている人も多いでしょう。でも、それは突然訪れることもあります。何か異変が起きてからでは冷静な気持ちを保つことが難しくなります。平時の時にこそ、正しい情報と選択肢を知り、準備しておきたいものです。

◎話すこと

そして、そのことをできるだけ日頃から話すこと、複数の家族・近親者に伝え、理解してもらうことが何より大切です。自分では伝えることができない場合、誰かに代弁者になってもらう必要があります。特に献体については、自分では実行できず、人に託すしかないからです。

「リビング・ウイル」と「献体」について整理してみました。ご参照ください。

▼リビング・ウイルとは

「人生の最期をどう過ごしたいか」を生きている時にする意思表明です。

リビング・ウイルについては、こちらに詳しく解説していますのでご参考になさってください。

◎公益財団日本尊厳死協会

◎小さな灯台プロジェクト「リビング・ウイル提示のタイミングについて」

▼献体とは

「遺体を無条件・無報酬で提供する」行為のことです。

「自分の死後、遺体を医学・歯学の教育と研究のために役立てたい」と志した人が、生前から献体したい大学またはこれに関連した団体に名前を登録して遺志を伝えておきます。遺体は解剖学の研究や医学・歯学生の解剖実習に活用されます。

登録は、あなたのお住まいの都道府県にある医科大学(大学医学部)か歯科大学(大学医学部)または献体篤志家団体(献体の会)へ申し込みます。間違って大学病院へ連絡する方がいますが、そうではありません。あくまでも大学の医学・歯学部の研修実習のための献体です。

登録には肉親者の同意が必要ですが、ここで大切なことは、複数の人にしっかりと理解をしてもらっておくことだと思います。亡くなられた時、遺族あるいは関係者がその遺志にしたがって遺体を大学に提供することによって、はじめて献体が実行されることになります。例えば妻だけが同意していた場合、亡くなった後、子どもや親族などが献体に反対し実行されないケースも少なからずあるからです。自分自身のことであれ、親のことであれ、日ごろからよくよく話し合っておくことが大切です。

献体の流れを整理してみました。

献体についてはこちらに詳しく解説されています。ご参照ください。

〇公益財団法人献体篤志献体協会 http://www.kentai.or.jp/index.html

◎まとめ

ある友人の話を思い出しました。友人のお父さまは献体に登録されていました。家族はその遺志を理解していたものの、葬儀をしないまま遺体が引き取られ、遺骨が返還されるまで、気持ちの整理がつかないまま辛い時を過ごしたとのこと。お父さまの遺骨が友人家族の手元に戻ってきたのは2年後でした。

友人が、ご遺体がなくても葬儀ができる選択肢があることを知っていたかどうか定かではありませんが、もし葬儀をした後で献体をしていたら、気持ちに小さなピリオドが打てたかもしれません。通夜、葬儀、火葬、お骨上げ、納骨までのプロセスは、遺された家族などが故人の死を自然な形で徐々に受け入れていくグリーフケアの役割も担っているといいます。グリーフケアの観点からは、この一連の儀式は、遺族の新たな出発のために必要なプロセスだと理解されています。家族のもとでこの一連の儀式をしないということ、その時遺された人はどんな気持ちになるのか、その時になってからしかわからないからこそ、よくよく話し合っておくことが大切です。

「リビング・ウイル」も「献体」も、知識として知っていても、実際にはなかなか理解できないことも多いと思います。そのためにも「小さな灯台プロジェクト」は、尊厳死協会会員のご家族から届く「看取りのエピソード」を掲載しています。そこには一人ひとり違う状況、感情があり、それを肌感覚で感じられることが多いと思います。ぜひ読んで、知って、考えてみてください。