ご遺族アンケートの成り立ち

 毎年2,000名を超える会員様がお亡くなりになります。ご遺族からの連絡により、その会員様のお名前が協会の登録から抹消されるのですが、1990年頃、当時の担当者がふと、お亡くなりになった様子を知るアンケートを取ってはどうかと思い付きます。果たして、戻ってきた手書きのアンケートには、医療で体験した医療者・介護者・病院・施設等とのリアルに迫るやりとり、そして家族が直面した最期の様子や思いがあふれていました。これらのアンケートは、長い間、門外不出の極めて高い個人情報扱いとして協会内で大切に黙秘保管されてきました。

ご遺族の体験談をその先につなげたい

毎年1000人以上ものご遺族との応答体験を積み重ねる中で、徐々に、リビング・ウイルを提示した場合としなかった場合では、看取ったあとのご遺族の感情が大きく異なることが見えてきました。リビング・ウイルをパートナー・家族・医療者に対して明らかにすることは、本人にとっての安心だけでなく遺された家族の心の平安も保障するものなのではないだろうか、これまで静かに続けてきたご遺族の方からの応答を、そろそろ協会活動に活かすことはできないものだろうか、そしてまだリビング・ウイルを知らない方々にまで知っていただくことはできないだろうか。担当者の熱心な問いかけは、「終末期医療の患者の意志決定支援」に繋げるものとして、日本財団助成金事業に応募、受託が決定、本プロジェクトが始動しました。

645名の事例からみえてくるもの~主観・直観から客観へ

このプロジェクトは、これまで門外不出の秘密書類としてきたアンケートを、事例紹介として一般公開する許可をいただくことからスタートしました。今回は、2020年に配布された1036名のうち回収645名(有効回収率65%)の回答者を対象とすることにしました。

ご遺族アンケートを初めて読む人の感想を確認するために、当協会職員ではない、終末期の看護体験豊富な看護師5人が、645名分を読み込み、会議を重ねたところ、次の2点が明確に浮上してきました。

リビング・ウイルが、終末期医療で迫られる選択と判断(気管切開、胃ろう造設、栄養補給方法、延命か治療か等)をご遺族がする間際の決断の拠り所になっている。

②アンケートの応答が、ご遺族の感情の表出となりグリーフケアを果たしている。この2点から、アンケートに表現されている体験・主観・直観を眠らせておくのではなく、これを『患者中心の医療』への提言に繋げていけるのではないか。そうすることで、亡くなられた会員様とご遺族による“最期の社会貢献へと意味付けできるのでは“という思いを強くしました。

まず紙面のアンケート内容をデジタルへ移行し、次に株式会社MBI代表取締役の成田徹郎氏がそのデータをテキストデータマイニング法を使って解析処理をして下さいました。さらにその解析結果を用いて、既述した看護師たちが看取り現場での経験や理論的解釈を踏まえた議論を重ね、【分析結果の報告書】を東京医療保健大学東が丘看護学部大学院看護学研究科教授、中島美津子氏を中心にまとめていただきました。(2021年8月)

『尊厳死協会の会員像』そして『ご遺族の感想の感情分析』についての詳細は是非下記にてご確認ください。


≪小さな灯台プロジェクト≫はさらなるステップへ成長していけることを願い、まずは小さな一歩を踏み出しました。
本サイトは、大切なご家族の死という体験をされた先人であるご遺族の皆様からの贈り物でもあります。
是非、さまざまな想いを感じ取りながらお読みいただき、意志決定の助けとして利用下されば幸いです。
最後に、協会活動へのご理解と皆様のご協力、ご支援をよろしくお願い致します。