点滴中止に戸惑い

遺族アンケート

87歳夫/看取った人・妻/三重県/2024年回答

あまり苦しむこともなく自宅で安らかに永眠できました。医師の方、看護の方など皆親切で感謝しています。

最後、点滴を中止されましたが、私は「してほしい」気持ちでいっぱいでした。しかし、点滴を続けることで、余計苦しくなると聞き、医学の知識がないので困りました。孫(当時医学生、現在は医師)に、「担当の先生の指示に従うことがおじいちゃんのため」と諭され、中止のままにしました。コロナにかかり入院していましたが、退院後3週間ほど自宅で寝たきり状態になっていました。知識不足の妻による看護でしたが、みんなによくしていただきました。本人も最後は「ありがとう」と感謝の言葉を口にし、まるで神様からのご褒美のように、一瞬ほほ笑んだように見受けられました。リビング・ウイルに入らせていただいて本当に良かったです。ありがとうございました。

協会からのコメント

終末期の点滴は無理な延命治療につながるとの理由で、適切な時期に中止する方針が浸透してきました。

「終末期の点滴は身体にはむしろ負担」といった知識が、市民に「生活情報」として広く知られていくことも、ご遺族が罪意識にとらわれないようになるためには大事なことだと思います。尊厳死協会理事で、4600人超の看取りに立ち会ってきた、立川在宅ケアクリニックの井尾和雄医師は「人間は枯れて逝くのが自然、終末期の『点滴は天敵』であること、最期まで口から摂ること。口から摂れなくなったら、点滴もしないでよい」と主張されています。

しかし、いざ! その時になると「してほしい気持ちでいっぱいに」なるものですよね。その想いを断つにためにこそ、主治医からのきめ細かな説明、周囲の温かな言葉と態度によるサポートが必要なことを教えてくれる「看取りのエピソード」です。説得でなく、納得を得られるように。

ご冥福をお祈りいたします。