「あんがと」と言って逝く―母の約束

遺族アンケート

82歳母/看取った人・娘/石川県/2025年回答

母は普段から、尊厳死について自分の意思を私たち家族に話していました。私は尊厳死協会の機関紙を読んだり、LW注)のコピーに目を通したりはしていませんでしたが、母は何度も「リビング・ウイルはここに置いてある」と、その保管場所を私に伝えていました。

また、母は最期の具体的な場面についても、「自宅で家族に『あんがと』と言って逝く」と、繰り返し話していました。私の娘たちや兄、夫など、周りの人たちにも常にその思いを伝えていました。正直なところ、「そんなに何度も言わなくても」と思うほどでした。

しかし、いざ終末期を迎えると、母が繰り返し伝えていた意思のおかげで、家族皆が一致団結することができました。

入院先では、主治医である内科医の先生と、訪問診療を担当してくださった先生にリビング・ウイルを提示しました。私が母の代諾者として、兄や夫とともに母の意思を伝えると、先生方にはその意思をよく理解していただき、母の望みどおりに対応していただくことができました。

尊厳死を選択し、穏やかに母を看取ることができた後は、不思議なことに、家族皆に達成感とさわやかな気持ちが残りました。寂しさよりも、母の生きざまや母の意思を叶えてあげることができた喜びのほうが大きく、母の美しい顔にも感動しました。娘が「家族写真を撮りたい」と言うほどの充実感があり、私たち家族にとって、とても素敵な思い出になりました。

私も尊厳死協会に入会しようと気持ちを固めています。これから家族とよく話し合ったうえで、申し込み書を記入するつもりです。私としては、こんなに素敵な母のことを秘密にするつもりはありません。できれば公表したいくらいです。

ご協力いただいた医療スタッフ、そして家族みんなに感謝しております。何よりもそれは、リビング・ウイルのおかげだと思っています。深く感謝申し上げます。

協会からのコメント

ご家族に見守られ「あんがと」と感謝を伝えて旅立たれたお母様、なんと見事な最期でしょうか。いざという時にご家族が一致団結し、迷いなくお母様の意思を叶えられたことは、深い悲しみの中にも清々しい達成感をもたらしてくれた様子がよく伝わる「看取りのエピソード」です。

リビング・ウイルがご家族の絆をより強くし、それが次世代へと受け継がれていく様子に、私どもも大変勇気づけられました。ご冥福を心よりお祈りしております。

編集部注)
LW(リビング・ウイル)とは、元気なうちに自分が望む終末期医療の希望を書き記した生前の意思表示のことです。