公益財団法人 日本尊厳死協会概要
概 要
【目的】
日本尊厳死協会は1976年に、人生の最終段階において、自己決定権に基づいた医療選択の権利が保障され、尊厳が損なわれることなく生を全うする社会の実現をめざして、医師、法律家、ジャーナリストらが集まり設立されました。
私たちは、病気が進行して助からないとなったら、「最期の医療のあり方(死のあり方)」を自ら選ぶ権利、自己決定権を持っています。それは人生の最期を自分らしく、どう生きるかの選択でもあります。
延命措置を望まないなら、その意思を書面で医療者や家族に明確に伝える方法にリビング・ウイルがあります。「最期まで自分らしく生きる」ために、協会はその意志表明書である「リビング・ウイル-終末期医療における事前指示書」を発行し、その概念を普及啓発する人権活動を45年以上続け、社会的に評価されています。
【組織】
設立時、任意団体だった協会は一般社団法人(2010年)を経て、2015年4月に一般財団法人となり、2020年4月に公益財団法人となりました。最高議決機関である「評議員会」のもとに、業務執行機関として「理事会」があります。評議員は公正な運営をはかるため、外部からの参加もあります。協会の代表は理事長で、複数の副理事長が理事長を補佐しています。監査機関として監事が置かれています。
事務局体制では本部を東京都文京区に置き、全国8ブロック(北海道、東北、関東甲信越、東海北陸、関西、中国地方、四国、九州)に支部があります。
【会費と会員】
15歳以上で、協会の趣旨に賛同する方は会員になれます。会員は年会費が必要で一人2,000円です。毎年会費を納入することでリビング・ウイルに表した意志が変わっていないことが確認できます。
【尊厳死とは】
尊厳死とは、傷病により死が迫っている場合や、意識のない状態が長く続いた場合に、本人の意思に基づき、死期を引き延ばすためだけの医療措置を受けないで、自然の経過のまま受け入れる死のことです。尊厳死は生の放棄ではなく、健やかに自分らしく生き、尊厳を保って安らかな最期を迎えるということです。
【リビング・ウイルとは】
リビング・ウイルは「終末期医療についての事前の意思表明書」です。病状が進行し死期が近づいたり、突然の事故に遭ったりして意思決定あるいは意思表明が出来なくなった場合に備えた書面です。これがあれば、いかなる時にでも本人の希望を家族や医療者に伝えることができる、己の分身ともいえる存在です。リビング・ウイルは英語(Living Will)ですが、すでにカタカナ日本語として定着しています。人権思想が高まった1960年代の米国で誕生し、患者の権利が育まれるなかで発達した制度です。
ごあいさつ
公益財団法人 日本尊厳死協会 名誉会長 岩尾 總一郎
現代医学、医療の発達は私たちに長寿をもたらしました。しかし同時に、病気が治る見込みがなく死が迫っているのに、死への過程だけを引き延ばすことをも可能にしました。その結果、いろいろな延命措置が患者を苦しめ、安らかな最期を阻むことも多くなりました。人生のすべてのステージで、自己決定権は最も基本となる人権だと考えますが、人生の最終段階においては一層尊重されるべきものです。その自己決定権に基づき、どのような医療を受けたいか、受けたくないかを自らの人生を振り返って決定し、それを家族や医療者と共有し、サポートしてもらう、つまり最期まで人生の主役・決定者は自分自身なのです。延命治療を望まないなら、その意思を書面で準備し、提示しましょう。
協会の目的は自分らしい生き方を追究することであり、それを実現するための表現として「尊厳」、ゴール地点を意味する「死」という語句を用いています。尊厳ある死とは尊厳ある生と同義です。
自分にとっての「尊厳死」「良き死」とは何かを問うてみてください。
私にとってのそれは、痛み苦しみを伴わず、心安らかで動揺がなく、そして終の棲家で愛する人々と限られた時間を分かち合い、満足して逝くことです。
この「小さな灯台プロジェクト」には、亡くなられた方やそのご家族のさまざまな想いが書かれています。苦悩、後悔、悲しみだけでなく、安らぎ、希望、そしてアドバイスが書かれています。自分では体験できないことをここから読み取っていただき、自分やご家族、パートナー、友の最期を迎える糧としてください。
日本尊厳死協会のスローガンは、「健やかに生き、安らかな最期を自分自身で守る」です。生存中に発行する「いのちの遺言書」とも言えるリビング・ウイルの普及を通じ、協会は多くの人々が「いい人生だった」と満足して逝くことができるような社会となるよう、これからも活動を続けます。