【情報BOX】家族と契約No.1 判断能力が衰えたときに守ってくれる後見制度
“超”高齢化社会といわれる日本。介護や認知症の話題が増えています。そこで、高齢化によって、今後ますます増えそうな「制度や契約」についてまとめます。
■これから増えそうな制度や契約 ・法定後見、任意後見契約 ・見守り契約、財産管理契約 ・遺言、死後事務委任契約、死因贈与契約 ・家族信託 |
◎高齢化と契約
高齢になると、人は老化や疾病により心や身体の活動能力が衰えたり(フレイル)、いわゆる「認知症」で認知機能が衰えたりすることがよく知られています。そして、「契約」とは「申込と承諾」という、当事者の「意思表示の合致」をいいます。
民法第3条の2には「法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」という規定があります。つまり「契約」は正常な「判断能力」と「意思表示」があってはじめて可能となります。
では、加齢や疾病によって判断能力や意思表示する力が失われたら、どうなるでしょうか? 単純にいって「契約」はできなくなります。あるいは「判断能力」が低下すると、日常の契約や財産管理、各種の手続きもしにくくなります。そこで、そうなった人を守る制度として「後見」があります。
◎代役が必要になる
人が老化などによって「サポート」を必要とするようになったときは、誰かが本人の「代わりに」意思表示をしたり、事務をしたりする必要がでてきます。契約でいわば代役を立てるわけです。
ただし、個人の意思はその人固有のものです。万が一、本人が望んでいないのに「代役」に勝手なことをされたら、かえって本人の利益を損ねてしまうでしょう。本人がどんな状態のとき、どのような権利を、どれくらい委任したり代理してもらったりできるのか(そうすべきなのか)は、非常に大切な問題です。本人の利益を守りながら、必要な代役の機能が果たせるような制度の選択をしなければならず、そのためにも、契約の種類と特徴を知っておきたいですね。
◎親が認知症になり、預貯金が解約できなくなったらどうしたらいい?
典型例は「後見制度」です。たとえば「親の預貯金が解約できなくなった」というような、いわゆる認知症等による「資産凍結」の問題に対応するものとして「後見制度」はよく知られています。民法上の「後見」は、本人の代わりに後見人が契約や財産管理、手続きなどを行うことで、法律的に本人を保護する制度です。「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。
◎「法定後見制度」と「任意後見制度」
「法定後見制度」が、すでに判断能力が不十分な人や、ほとんど判断ができなくなってしまった人に対応する制度(本人の判断能力の状態に応じて「補助」、「保佐」、「後見」の3種類に分かれます)なのに対して、「任意後見制度」の方は、現時点ではまだ本人に判断能力があるけれども、将来本人の判断能力が低下したときに備えて「あらかじめ後見人を選んでおく」ための制度になっています。つまり「法定後見」は「今すぐ」に後見人を付けるためのもので、預貯金の解約などで活用されているのはこちらの方です。もうひとつの「“任意”後見」の方は、いわば「後見人の予約」みたいな制度といえます。「予約」ですから、契約締結時点では本人にもまだ「判断能力」があります。その後実際に「任意後見」が開始するかどうかは(その方の判断能力がどうなるか次第ですから)契約締結の時点ではわかりません。
▼法定後見制度の「評判」が悪い理由
ところで、よく週刊誌などで「後見人を付けたらひどい目にあった」とか「後見で後悔した」のような見出しをみかけることがあります。誤解やイメージもあると思いますが、法定後見制度には意外と“評判の悪い”側面があります。もちろん、後見制度の趣旨は本人の(財産の)保護にあるのであり、決して「悪い」ものではないと思います。しかし、たとえば「申立費用がかかる」「手続きが面倒」「後見人への月々の報酬がかかる」「途中でやめられない」「本人の財産を(家族のためであっても)使えなくなる」などが、従来からデメリットとして指摘されていることは事実です。
「後見制度」は、「家庭裁判所」によって厳格に管理される制度です。誰が成年後見人になるかも、裁判所が決めます。「(家族のためにであっても)本人の財産を使えなくなる」という部分は、本人の財産が強く保護されるという意味では「メリット」でもあります。ただ少なくとも気軽に使える手続きではありませんから、ご家族などの周囲が制度の趣旨をよく理解した上で活用すべき制度だといえます。
後見制度のデメリットといわれているもの ・家庭裁判所への申立てに費用がかかる ・手続きが面倒 ・後見人への月々の費用がかかる ・本人の財産を(たとえ家族のためだとしても)使えなくなる(使いづらくなる) ・途中でやめられない |
ちなみに、成年後見人への報酬(月額数万円程度)は、成年“被”後見人(=つまり本人)が負担するものです。この点は誤解の多いところだと思いますので、書き添えておきます。