患者さんはここまでして生きたいと思っているのだろうか? ~ACP支援コーディネーターの立場から~
泉大津市社会福祉協議会 泉大津市地域包括支援センター
在宅医療・介護連携コーディネーター
(大阪府看護協会:ACP支援コーディネーター)
看護師 城家 優子
【想い・意見】
ひとりひとりを人として尊重し、それぞれの価値観・人生観・死生観にそった、その人のナラティヴ・物語を重視した人生の最終段階における医療・ケアを実現するためのACPを考えると、状況に応じて装着した人工呼吸器を外せないことはないのではないかと思います。
ACPを厚労省が推進する中、大阪府看護協会のACP支援コーディネーターということもあり、地域住民や多職種向け研修会等でACPの講師をさせていただくようになりました。
講師をしながら、思い出すのは、心臓血管外科で看護師として勤務していた時代のことです。急変し呼吸停止、意識不明に陥った高齢の患者Aさんに、ご家族の意向で、あっという間に心電図等のモニターはもとより人工呼吸器、バルン、IVHが留置され、その後は透析も開始となり、肌は黒ずみ、ブヨブヨに。聴力は最期まで残るとどこかで聞いていたので声かけし清拭を行いながら、意識があった時の穏やかで優しいAさんを思い出し「Aさんは、ここまでして生きたいを思っているのだろうか。生きるとはどういうことなのか」と涙した時の光景が数十年経った今でも鮮明に思い出されます。
法を整備することで、条件や状況に応じ、人工呼吸器を外すことが可能になるのではないか。可能にする必要があるのではないかと考えます。
【協会からのコメント】
「ACP支援コーディネーター」注1)という役割も新設され、ACPについてのご家族との話し合いが浸透していくと思われます注2)。
このACP推進の役割を担う医療職者たちの精神的負担感を軽減する視点からも、命に直面する機会となる「人工呼吸器装着のお試し期間(time limited trial)の法制化」を期待したいものです。
編集部注)
1) 投稿者は公益財団法人大阪府看護協会の「ACP支援専門人材育成事業 専門育成人材研修」を受講。「ACP支援コーディネーター」として、「看護師のためのACP支援マニュアル」を活用して、ACPの普及啓発活動を行っています。
参考)看護職のためのACP支援マニュアル
http://www.osaka-kangokyokai.or.jp/CMS/data/img/acpmanual.pdf
2) 2024(令和6)年度診療報酬改定(6月1日施行)で、病院が入院料を取得する大前提となる基準(通則)として、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容をふまえ「患者の意思決定支援を行うこと」が定められました。
以上