医師から「看取り期に入った」との状況説明がほしかった
遺族アンケート
96歳母/看取った人・息子/東京都/2024年回答
経緯:
自宅で骨折し入院→車椅子生活になり、退院後は介護施設に入所→提供されるサービス悪化のため退所して自宅で家族が介護(訪問医療・リハビリ利用)という経過でした。
最期は、ある担当作業療法士から「ピンピンコロリ」と表現されました。
医師の反応:
上記の各段階の開始時に、それぞれの医師から延命措置等に関する希望聴取がありました。その都度、会員証の提示により医師との意思疎通を良好に行うことができ、意思を受容していただける確認ができました。その際、かなり古い日付の会員証しか持っていなかったので、医師への提示の際、有効性が心配でしたが、問題にはなりませんでした。
ただし、貴協会やリビング・ウイル制度についてはどなたもご存じありませんでした。
家族として感じたこと:
貴協会のリビング・ウイル制度は、本人の意思を確認でき、超高齢の家族の介護を行っていく上での覚悟や死に際しての判断にとても役立ち、ありがたかったです。
一方、そのマイナス面ではないか? と感じたこともあります。明らかに普段と違う様子だったのに、前々日の往診時や前日のリハビリ時に医師等から家族に対して「終末期にあり死が切迫している」旨の説明はありませんでした。当初からリビング・ウイルを承知している医師や看護師は「家族は十分覚悟ができている」との認識で、あらためて状況を家族に説明して延命措置等の意思確認を緊急に行わなければならないという判断に至らなかったのではないか、との疑念が消えません。あらためて状況説明があったなら、意思は変わりませんが、時期に応じた、より後悔の少ない対応がとれたのにと残念に思っています。
長年にわたり会報送付等ありがとうございました。貴協会の益々のご活躍を祈念申し上げます。
協会からのコメント
「前々日の往診時や前日のリハビリ時に医師等から家族に対して『終末期にあり死が切迫している』旨の説明はありませんでした」……まさに、大事なご指摘をいただきました。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)といって、終末期における医療やケアの希望を積極的に聞くことが、医療機関や介護施設でも普及してきました。ところが、それが、延命措置等に関する医師からの希望聴取や、署名捺印、書類作成に偏りすぎている現場も少なくありません。延命措置を希望しないと答えた患者と家族に対する、より親身な言葉や態度、ましてやご指摘のとおり「死が切迫している」旨の説明や場の設定などに、もっともっと配慮が欲しいと願わずにいられません。
まだまだ、終末期の医療とケアは発展途上なのだと思います。その時、どんな対応をされたか、それを遺族はどう感じたか、どうあってほしかったか……個人的な経験だからこそ、大切なことなのです。「死をより良く生きる」ことにつなげられる「幸福な看取り」の実例が増えていくように、クレームではなく対話を重ねる必要があります。「小さな灯台」はその役割を果たしていきたいと思いますので、会員の皆様の投稿をいつでもお待ちしています。 心からのご冥福をお祈りしております。