一般財団法人日本看護学教育評価機構常任理事様から、小さな灯台に寄せてメッセージをいただきました。

多死社会とはいえ、普通の人々の生活の中では死を話題にすることは極めて少ないのが実情です。このことは、人が死を迎える場所は圧倒的に病院が多く、私たちの日常から死が切り離されていることと無関係ではないでしょう。しかし、誰もが一生の間に数回は、愛する大切な人との死別を経験します。そのたびに、残された者として誰もが、大なり小なりの後悔や葛藤などを経験すると思われます。

20年近く前になりますが、私の父はがんで他界しました。最期の時期は在宅医療を受けていましたが、点滴を嫌い、自己抜去したことがあったそうです。死後、父の机の中から、終末期医療についての考えが書かれた便箋4枚の入った封書が出てきました。今でいうリビング・ウィルでした。しかし父は、同居する家族や医療者にその意思を開示することはなく、行動で示しただけでした。私は今でも、看護に携わる者の一人として、父の思いを受け止め、表出を促すことができなかったことに、忸怩(じくじ)たる思いが残っています。

日本尊厳死協会の「小さな灯台プロジェクト」は、会員による看取りの体験談や、リビング・ウィル受容協力医師を検索できるなど、人生の最終段階における意思決定やその支援に大いに役立つ情報が掲載されています。必ず迎える自分自身の、そして大切な人の最期のためにも、この「小さな灯台プロジェクト」を大いに活用したいと考えております。


1999~2006 厚生労働省医政局看護課長
2006~2016 国立看護大学校長・名誉教授
2016~2020 日本赤十字九州国際看護大学長
2021~現在 一般財団法人日本看護学教育評価機構 常任理事

田村 やよひ