【情報BOX】―想いを未来へつなぐ― ・遺贈寄付を知っていますか?
No.2 遺贈寄付を執行してもらうために
「遺贈寄付を知っていますか? No.1」で、「遺言書の作成方法」を大まかにイメージできたと思います。ところで「遺贈寄付」をしたい場合、具体的に「遺言」にはどのように書くのでしょうか?
◎遺贈の文例
これは、特に難しいものではなく、基本的には「何を」「どこに」遺贈するかをそのまま文章にします。例えば以下のような文例になります。
第〇条 遺言者は、その有する下記の財産について、○○大学(所在地:東京都○〇〇区〇〇 〇丁目〇番〇号)に遺贈する。 記 【財産の表示】 現金 〇〇万円 |
▼遺言執行者を指定する
また、「遺贈寄付」の場合、当然ながら寄付を実行する時にはご自身は亡くなっていますから、「遺言執行者」を指定しておく必要があります。「遺言執行者」とは、遺言の内容を実現させるべく遺言または家庭裁判所により選任された者のことで、要するに本人の代わりに遺言の通りの手続きをやってくれる人のことです。
法律上、未成年者や破産者でなければ「誰でも」遺言執行者になることはできますので、たとえばご家族などを指定されても構いません。ただ、遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法1012条)とされていますし、相続人に対して善管注意義務*1)があり、かつ、執行事務処理の状況について報告義務があります(民法644条、645条の準用)。つまり、現実的には「誰でも」とはいいにくく、相続に関する事務処理を行える力量を備えた人である必要があります。よって理想的なのは、弁護士さん等に依頼することです。
*1)善管注意義務とは
善良な管理者の注意義務の略。職業や社会的地位から考えて通常要求される注意義務のこと。自分の財産に対する注意義務よりも重い義務であるため、これを怠ると状況に応じて損害賠償や契約解除などが可能となる場合がある。
第○条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、下記の者を指定する。 記 住所 東京都〇〇区〇〇 〇丁目〇番〇号 職業 〇〇 氏名 〇〇 〇〇 生年月日 昭和〇〇年○月〇日 |
◎特定遺贈と包括遺贈
▼特定遺贈がおすすめ
ところで文例には「寄付する」ではなく「遺贈する」と書いてありますが、「遺贈」とはなんでしょうか? 「遺贈」とは、遺言によって財産を譲ることです。「相続」とは似て非なる概念です。財産を譲る相手が「推定相続人」*2)の場合は「相続させる」とし、特に理由がある場合以外は「遺贈」とはしません。逆に「遺贈寄付」のように推定相続人*2)以外の者に財産を譲る場合は必ず「遺贈する」と記載することになります。また、「遺贈」には「特定遺贈」と「包括遺贈」があります。「特定遺贈」とは「現金10万円」のように、遺贈する財産を具体的に指定して行う遺贈ということです。これに対して「包括遺贈」は、たとえば「その有するすべての財産」とか「財産の20%」のように、「割合」で指定する遺贈です。
*2)推定相続人
誰かが亡くなったと仮定した場合に、法律の定めから原則として相続権があると考えられる人
▼包括遺贈のデメリット
注意していただきたいのは、「包括遺贈」は被相続人の地位の割合的承継である点、つまり「包括受遺者(包括遺贈を受けた人)は、相続人と同一の権利義務」を有することとなります(民法990条)。ゆえに「包括遺贈」を受けると、“被”相続人(亡くなった人)に、もしも借金などのマイナスの財産があった時は、これも(包括遺贈の割合で)引き継ぐことになります。「包括」遺贈として財産を「割合」で指定されてしまうと、実際に寄付を受け取る際にまず計算をして財産を特定する手間がありますし、加えて、もしもマイナスの財産があれば、寄付を受け取る側にとって(思わぬ)負担となるため、受け取る側も慎重にならざるを得ません。
こうした「包括遺贈」のデメリットを考えますと、いうまでもなく「遺贈寄付」に向いているのは「特定遺贈」の方です。どの財産をいくら譲るのかは、明確に特定するべきでしょう(「包括遺贈」による遺贈寄付も、理論的には有効です。事前に寄付先とよく打ち合わせることにより、包括遺贈も問題なく受け入れられる可能性はあります)。
▼特定遺贈と包括遺贈の違い
■特定遺贈「私の銀行預金から金10万円を○○大学に遺贈します」 (財産を具体的に特定する遺贈) →遺贈寄付に向いているのは「特定遺贈」だといえます。 ■包括遺贈「私の全財産( or の◯分の1)を○○大学に遺贈します」 (財産を特定せず、全部とか、何割といった割合で表す遺贈) →相続人と同一の権利義務を有することになる。つまり「負の財産」も引き継ぐ意味になるので注意が必要です。 →やむを得ず包括遺贈による場合は、寄付先と事前に打ち合わせるべきだと思います。 |