認知症で話せない母に代わって、その意思をかなえることができました

遺族アンケート

90歳母/看取った人・娘/神奈川県/2021年回答

亡くなる2か月前ぐらいに誤嚥性肺炎で入院しました。その時の担当医はまだ若い方で、長く生かそうということに重きをおいていらっしゃいました。そのため胃ろうして、と提案されました。そこで、尊厳死協会に入っていること、以前から本人が生かされることを望んでいないこと、お世話になっている高齢者施設、ケアマネジャーからも胃ろうにしなくても食事の対応等できるという話だったことを伝え、これらを総合して「肺炎の症状がなくなるまで入院。退院後は施設へ」という話になりました。病院の患者サポートセンターの相談員からも、私の決定で良い(その人も同じ立場ならばそうする)と励ましの言葉をいただきました。母自身は認知症で、自分では話せない状態でした。退院後しばらくは自立歩行でき、ミキサー食を自分で食べることもできるようになり、ほっとしていたころ、寝ていることが多くなってきました。そしてだんだん食事も水分も取らなくなってきました。コロナ禍ではあるものの、施設では私の面会を毎日認めていただき、亡くなる当日お昼ごろ血圧の低下で連絡をいただき、私が施設に着いて1時間しないうちに眠るように亡くなりました。胃ろうをしていれば、多分違う病院1)に転院し、なかなか会うこともできずに少しだけ長く生きて亡くなったと思います。今は母の生前の意志を尊重できたと思っております。

コロナ禍という難しい時期ですが、苦しむことなく送り出せたことに安堵しております。

母の意志を確認するため、貴協会に入会していたことは、とても有意義でした。ありがとうございました。

編集部注:
1)医療行為が可能な療養型病院へ転院になり、治療管理される

協会からのコメント

代託者の役割が明確に伝わる素晴らしい看取りのエピソードです。

認知症になる前の元気なうちに協会に入会し、リビング・ウイル登録をして、子どもにその意思を託しておかれたこと。託された娘さんが、その意思を病院の医師、ケアマネジャー、相談員など、医療・ケア職に説明と同意を求める努力を重ね、最期を施設で過ごす選択をされていくプロセスが良く表現されています。逝く人の「生前の意思を尊重」し、かなえるために代託者という役割が必要なことを、このエピソードを通して、多くの人々に理解していただきたいと思います。

このような実践成功例の一つ一つの積み重ねこそが、リビング・ウイルの啓発活動の要になります。代託者としての大役を立派に果たされたことに敬意をこめて、ご冥福を心よりお祈りいたします。