長尾和弘先生の本を道しるべに
遺族アンケート
79歳夫/看取った人・妻/愛知県/2022年回答
まだがんになる前から、延命治療はしないことを、事あるごとに言っておりましたので、がん(それも完治するのは非常に難しい膵臓がん)と告知されてから自分はどう死に対していくか考えるようになりました。運よく手術も成功し、その後5年以上も抗がん剤をうけてきましたが、昨年10月くらいからそれも効果がうすれてきたので中止しました。
最期は家でという本人の希望で在宅医療をお願いし、痛みだけはとってもらうという医療をうけました。1週間に1日だけ先生に来てもらい、週に3日看護師さんに訪問していただく生活が半年ほど続きましたが、徐々に食べられなくなり、先生も食べたい物を食べられるだけ食べればよいというお考えで、本人の意志を尊重してくださいました。
こんな時世に入院していたら好きな時に会うこともできなかっただろうと思うと、夫の選択は本当に正しかったと思います。友人や親類、親しい仲間たちも自宅にいれば逢いに来てくれます。
不思議なことに、亡くなる前日の夕飯も少しですが、本人が食べたいと言ってベッドで自分で箸を持って普通に食べることができ、まさか明くる日に最期を迎えることになるとは、その時は思いもしませんでした。
一日一日を大切にそばにいられたこと、私にとっても本当に良かったと思えます。それに、この3か月(亡くなってから)はあっという間に過ぎて悲しみもほとんど感じなかったことはどうしてでしょう。夫のいない生活を考えると堪えられるかしらと思っていたのに、それも夫のおかげでしょうか。
全く苦しむことなく、最後まで自分でトイレに行き、立派な死に方だったと思います。ありがとうございました。
追伸 たくさんの先生方の本を読み、長尾和弘先生にはとくに共感したようで参考(道しるべ)にさせていただきました。
協会からのコメント
すい臓がんの手術とその後の抗がん剤治療、在宅に移行後の緩和医療。妻の助けなくてはどれもできなかったことと思います。医薬・治療法の開発で死病ではなくなったといわれるがんですが、その長い治療期間を平常心で過ごしてこられた様子がよくわかる「看取りのエピソード」です。ご家族の深い愛があったからこそですね。やり切った清々しさをもち続けてほしいと願います。くれぐれもご自愛ください。