【情報BOX】グリーフケアとピア・カウンセリングのすすめ

グリーフケアに関しては、【情報BOX】の「グリーフケア-大切な人を亡くした哀しみを癒すために」も参考になります。ぜひあわせてご覧ください。

人生において、誰もが大小さまざまな哀しみを経験します。この哀しみの感情をグリーフといい、最も深いものが、大切な人を亡くした際の「死別の哀しみ(看取りの哀しみ)」です。リビング・ウイルをかなえ、十分に満ち足りた看取りだったとしても、グリーフを避けることはできません。

◎看取りによる喪失感
死別、失恋、子どもの巣立ち、転居、転勤、退職、大切にしていた物の紛失、手術による身体の喪失など、グリーフは何かを失った時に生まれることが多い感情です。看取りは、かけがえのない人を失った時に経験する最も強いグリーフです。

グリーフの問題を未解決のままにしていると、その後、心身の健康や生活全般に大きな影響を残すことがあります。そうならないためには、死別の哀しみを言葉にしてみることが必要です。そして、その言葉をきちんと聴いて、心を寄り添わせ、支えてくれる人、つまりエモーショナルサポート(情緒的支援)を提供できる存在が欠かせません。つらい時は一人で抱え込まず、そのようなエモーショナルサポートをしてくれる「癒し人」を求めてください。

近年、グリーフケアに力を入れる医療介護関係機関も増え、グリーフワークを実施したり、遺族外来を設けたりしていますので、利用してみてほしいと思います。

◎グリーフケアにはピア・カウンセリングが有効
カウンセリングには、臨床的カウンセリングとピア・カウンセリング(相互扶助的カウンセリング)があります。

皆様がまず思い浮かべるのは、専門家と1対1で話すカウンセリングだと思いますが、これは臨床的カウンセリングです。

それに対して、専門家によらず、共通の体験をした人同士が語り合うのがピア・カウンセリングです。そして、ピア・カウンセリングをする集まりを、セルフヘルプグループ(自助グループ)といいます。

実は、グリーフケアにはピア・カウンセリングが非常に有効であることが知られています。ピア・カウンセリングは「共感」が深いのがポイントです。苦しみは同じ経験をした人でなければ理解できない部分があります。そのため、「あなたもそうなの、私もよ……」という共感のやり取りが、相談する人の心を開きやすくします。

「ピア」は英語で「仲間・同等の立場の人」という意味です。ピア・カウンセリングは、誰でも、いつからでも始められます。何の資格も必要ありません。必要なのはカウンセリングマインドです。

◎ピア・カウンセリングに必要なカウンセリングマインド
ピア・カウンセリングは、カウンセリングマインドをもった人同士の交流関係を通して、自己解決を促していくものです。
カウンセリングマインドは、学術用語ではないので明確な定義はありません。しかし、カウンセリングの理論や技法のベースとなるもので、人間関係を大切にする姿勢です。相手の防衛的な心を和らげるような「触れ合い」と、役割や立場を踏まえた節度ある「つき合い」の2点を意識しましょう。

その上で「受容」「共感」「傾聴」のスキルを磨きましょう。
☆受容(どんな考えや感情も、拒まずにありのままに受け容れる)
☆共感(あたかも……であるかのように、相手の立場、相手の考え、思いを理解する)
☆傾聴(耳を傾けて聴く。言葉だけでなく気持ちも見抜き、察する)
特に傾聴は、カウンセリングの基本のスキルです。ここで最小限の心得として役立ててほしい「傾聴の法則」をいくつかご紹介します。

  1. 笑顔は訓練で獲得でき、一瞬で第一印象を引き上げる
  2. 「助ける」「解決する」ではなく「明るく接する」
  3. 「聞く」から「聴く」へ
    ・内容が相手の話題になるように仕向け、相手との違いではなく共通点を見つけるようにする
  4. 相手に時間をプレゼントする
    ・スマホの電源は切り、自他ともに安心して話に集中できる時間を用意する
  5. 相手を褒める、認める、理解する
  6. はっきりと応答する
    ・相手の目を見て相槌をうつ
  7. 共感を示す
  8. できないことにはノーと言う

出典:近藤和子.看取りのグリーフケア.ごきげんビジネス出版.2022.88p

ピア・カウンセリングは問題解決の場ではなく、共感の場です。相手の話を決して否定したり批判したりせず、「さぞかしおつらかったことでしょう」と気持ちに寄り添い、解決しようとしすぎないことが大切です。

▶ピア・カウンセリングの先行事例
かつて筆者は、育児中の母親たち(この当時はまだ育児は母親がするのが当たり前の時代でした)に対して、電話相談や手紙相談という形でピア・カウンセリングを実践したことがあります(1980年~2000年に電話相談員の育成と相談対応7000件以上・育児グループの育成2000件余り、手紙相談のレターカウンセラー育成とスーパーバイズは13万件を達成)。専門家ではない、「同じ悩みを経験した母親」が相談に回答する……それがどれだけ説得力があり、励みになるものかということを確信しました。そしてここでも、共感と安心感を与えるエモーショナルサポートの効果を実感しました。

◎ピア・カウンセリングのはじめ方
大切なのは「同じ体験をした仲間と、安全に語り合う場をつくること」です。

1「同じ体験をした仲間」を見つける
自然に同じ体験をした人と出会う方法として「医療介護従事者に紹介してもらう」「グリーフケア団体が主催するワークショップなどを探す」などがあります。

ピア・カウンセリングに興味をもったら、まずは看取りの際にお世話になった医療介護従事者(看護師やケアマネジャーさんなど)に相談すると、ピア同士の交流会や地域のグリーフケアの集まりを紹介してくれることもあります。グリーフケア団体が主催するワークショップを調べてみるのも一つの方法です。参加してみて「気持ちが落ち着く」「安心できる」と感じられる人と出会えたら、何度か足を運んでみましょう。お互いに心が通じ合うと感じられたなら、その後「お茶を飲みませんか?」と声をかけてみるのもよいでしょう。

2 自分で見つける
お知り合いで、同じように大切な誰かを看取った方がいれば声をかけてみるのもいいかもしれません。また、インターネットで同じ経験をもつ人の交流サイトに参加してみる方法もあります。インターネットは「匿名性がある」「遠くの人とも交流できる」というようなメリットもあります。しかし、拡散リスクなどもありますので、本名・住所・連絡先などを公開したり、体験談に具体的な病院名や個人名を書かないなど注意する必要もあります。

◎ピア・カウンセリングのルール
ピア・カウンセリングは、ルールに縛られすぎず、無理をしないことが大切です。違和感があれば一度で終えてもよいですし、心地よければ継続してもかまいません。話したくない日はキャンセルできるような、寛容な関係を築くことが大切です。人数は1対1でも複数でも構いませんが、まずは小さく、多くても5人程度が望ましいでしょう。

ただし、守るべき基本的なルールが2つあります。
1 守秘義務
聴いたことを決して外に漏らしてはいけません。
2 重すぎる悩みは専門家の領域
感情のコントロールが著しく難しい、生活に大きな支障が出ている、アルコールや薬物への依存が強い、あるいは希死念慮がある場合は、専門家(地域包括ケアセンター・保健師・医療機関の医師等)の支援につなぐことが必要です。

◎まとめ
多死社会を迎えようとする今、グリーフケアラー、セルフヘルプグループの必要性はますます高まるでしょう。ピア・カウンセリングはできるだけ、近い価値観の人同士で話すことが有効です。「リビング・ウイル」を果たしたという共通体験があれば、共感はさらに深まり、かけがえのない仲間になり得ると思います。もし、ご自身がセルフヘルプグループを立ち上げているなどの実践例がありましたら、ぜひ「小さな灯台」にお寄せください。

「小さな灯台」は、会員のご遺族同士がセルフヘルプグループとしてつながっていく方法がないものか、模索していきたいと考えています。

セルフヘルプグループをつくるって難しそう……そう感じられるかもしれません。しかし、知識は後からついてくるものです。代諾者として、覚悟と行動力をもって大切な方の看取りを果たされた皆様には、十分にセルフヘルプグループをつくる力があると思います。まずは語り合える「仲間」をつくる勇気をもってみませんか。

文責:小さな灯台プロジェクト・リーダー/看護師 近藤和子