愛する人の命をたち切るつらさ
遺族アンケート
通院中に尊厳死協会の会員である旨伝えてありましたので、入院中も余分な処置はされず、心臓の状態等が落ち着いた段階で、当人の希望通り自宅介護となりました。でも、要介護5の状態での自宅介護は、ヘルパー・看護師・マッサージ師・訪問入浴等の手を借りても非常に大変でした。最後の数か月は訪問医師・訪問看護師のお世話になりましたが、“私の希望表明書”のコピーをお渡しして理解していただくことができました。終末期は暮れの29日で医師は間に合わず、電話で救急車を呼ぶ様に指示され、救急隊の方々が来てくださいました。が、彼等の仕事は命を救うことですから、心臓マッサージをしてくださりながら、救命救急センターに搬送する様すすめられました。この時は、口頭で、本人が延命処置を望まないことを伝えましたが、何回も繰り返し救命救急センターへとすすめられ、それをことわり続けている間、私はとてもひどいことを云っているのではないか、心の冷たい妻なのではないかとの想いを抱かせられました。非常に健康だった夫にとって、寝たきりで全て他人まかせの生活を1年半も続けたのはとても辛かった様で、夜私と二人きりになると“もういい、逝かせてくれ”と静かに繰り返し言っていましたので、全て終わった今はこれでよかったのだと思うことにしています。元気な時は、延命治療は絶対受けたくないと思っていても、いざ最後の時を迎えると“もうそこまでにしてください”と愛する人の命をたち切ることを告げるのは、とても辛いことです。特に病人が最後まで意識がはっきりしていた場合、終わりにする言葉を聞いていたのではないかとさえ思います。これは致し方のない心の問題でしょうか。私はクリスチャンなので、永遠の命を信じてはおりますがー
協会からのコメント
これは残念な「看取りのエピソード」としてのご紹介です。
終末期の段階で訪問医師が救急車を呼ぶ指示ではなく、訪問看護師の派遣を指示すべきでした。尊厳死協会の会員であり「私の希望表明書のコピー」も手渡し、在宅介護を選択し、医師にもケアチームにも説明と同意を取り付ける努力を重ねておられた奥様の覚悟が活かされなかった残念な「看取りのエピソード」です。
この場合、救急車ではなく、在宅看取りに理解と経験のある看護師につないでよいことを、多くの会員の皆様にしっかりお伝えしていきます。「夫の意思の尊重」を最期まで成し遂げられた奥様の覚悟に敬意を表します。愛する人とのお別れはどんな形でもつらいものです。ましてや延命治療をことわるジャッジをしなければいけない状況を経験され、どんなにかおつらいお気持ちでしょう。1年半の介護の間もご本人の苦しい心の内を理解しながら支え続けた奥様には頭が下がります。奥様は間違っていません。これでよかったのだと、ご自分の信仰を深めていただけますように。きっとご主人様も見守っていてくださいますよ。「小さな灯台」も見守り続けます。くれぐれもご自愛ください。