「命の決断」 4人の妻たちの物語
-「尊厳死協会に入会している」という事実がよりどころでした-
夫が生前から「リビング・ウイルカードをもっていたから」「リビング・ウイルについて何年も話題にしてきたから」と「尊厳死協会に入会していた」事実をよりどころにして、命の岐路で重大な決断をされた4人の妻たちの「看取りのエピソード」をご紹介します。
1の方は「リビング・ウイルの日々」という表現で自然な看取り体験を。2の方はカード を示すことで「夫(83歳)の尊厳死希望を医師と双方の身内に明確に説明できた」と。3 の方は認知症で本人が判断できなくなった時に、白血病の治療を中止する決断を。4の方は人工透析中止の決断を。リビング・ウイルカードがあったからこそ、医療者、家族共に納得のいく決断ができたという「看取りのエピソード」です。
遺族アンケート
1
夫は告知を受けてから1年、本人の希望で入院手術を受けず、毎月の検診を受けながら投与される薬を飲んで、普段通りの生活を送っていました。体調が悪化した時は、自宅での療養介護を本人も家族も受け入れていましたので、4か月間のリビング・ウイルの日々を穏やかに明るく過ごしました。医師・ヘルパー・ケアマネジャーさんたちの温かい対応の中で、和やかで穏やかな見送りをすることができました。協会の会員であることの心の安らぎ…本当に感謝です。ありがとうございます。
2
10年前姉が脳出血で病院へ、姉と私は10~15年前に尊厳死協会に入会していましたので、先生にカードと宣言書を読んでもらいました。先生は「うんーうん」と……姉の手術後に意識の回復は「ない」と判断された時には、最低限の点滴のみにして、7日目に安らかに旅立ちました。今回の主人の時も先生にカードと宣言書を読でもらいました。呼吸困難のために中心静脈にカテーテルを挿入して検査、処置、治療と、できるかぎりの対応をしていただきましたが、7日目にカテーテルをぬいていただき穏やかに眠りにつきました。尊厳死協会に入会していると、先生にも、どちらの身内にもこちらの思いをはっきりと言える。ありがとうございます。
3
白血病と認知症がほぼ同時期から始まりました。お薬を大学病院で2年ぐらい飲んでおりましたが、認知症が進みまして施設に入所が決まり、その時に家族、医師で相談してお薬をやめることにしました。
お薬をやめてから家族はホッとしました。認知症はあっと言う間に進みまして、私(妻)は家で看ておりましたが、息子が共倒れになると申しまして、施設を探してやっと入所できました。入所してからは本人も穏やかに生活をしていました(施設の職員さんがとても良くしてくださり、安心しておりました)。家族(私、息子、娘、それぞれの孫たち)は良く面会しまして、本人もいつも喜んでおりました。10月9日、いつも通り施設へ向かっておりましたら、途中で電話があり、たった今息を引取りましたとのこと……部屋へ入った時、とっても穏やかな顔でホッといたしました。これからは私自身の事になりますが、子どもたちには、私も尊厳死協会に届けていることを伝えてありますので安心しております。宜しくお願い致します。
4
最後の6年間は脳梗塞を発症し、寝たきりとなり、語も失い、意志の確認もできず終わりました。最後の透析(死の10日前)が終わった日の夜、容体が急変した時、延命処置は不要と医師に申し上げ、了承してもらいました。きっと寝たきりになった時から、意志が表明できたら、本人は人工透析を止めるように言ったと思います。
協会からのコメント
信頼と絆を築くツールとしての「リビング・ウイルカード」
治療によって回復が望めない時にどうして欲しいか、という命の尊厳を守るための自分の希望を、元気な時に判断しておけるのがリビング・ウイルです。
尊厳死協会への入会をきっかけに、夫婦・兄弟姉妹・子どもや孫たちと尊厳死の話ができる。双方が納得した上で、いざという時には、意思と希望を知っている人が本人に代わり実行してくれる代託者となる。そうした信頼と絆の関係づくりのツールとしてリビング・ウイルカードがあるように思います。
今のところ、確たるエビデンスがあるわけではありませんが、長年看取りを経験してきた看護職・介護職者たちは、よく次のようにいいます。
「具体的にカードを示して、夫婦や家族で『いつか来る時』について本人の意思・希望を共有しようとするご家族は、死の話が自然にできる信頼と絆の家族関係と環境が整う。すると、むしろ『死を看取る』という道のりそのものが、家族にとってやりがいと達成感、満足感を覚えていただける」とか「看取る家族に私たちが期待しているのは、あいまいな気持ちではなく、明確な“覚悟”なのです。それさえあれば、知識や支援はあとからついてくるのですが……」と。
そしてもう一つ、リビング・ウイルカードを提示して、延命治療を希望しないという意思表明をした後にどのような自然な「看取りの経過とケアの方法」があるのか? 知識として知っておくと、さらに判断への迷いを減らすことができるかもしれません。
死は誰もがいつかは到着する自然な場所ですが、そこに至る道筋は千差万別です。
せっかくの機会ですから、カードを持っている安心感と共に、
【情報BOX】 日本尊厳死協会員のための【看取りの観察と過ごし方ガイド】
―安らかに健やかに最期を過ごしていただくために、私たちにできること―
を参考に準備をしておきましょう。いつか、どこかで、誰かのお役に立てるかもしれません。
🔴「日本尊厳死協会員のための【看取りの観察と過ごし方ガイド】」についてはこちらをご覧ください。