【情報BOX】「大切な人(伴侶)」をどこで看取りたいですか?

―「リビング・ウイル」を意思表明した人のための「終の棲家」探し方ガイド―

◎自宅で最期を迎えたい

介護保険制度施行後は、介護施設でも「看取り」まで行えるところが増えました。ただ、一般的には最期を過ごす場所というと、病院か自宅しかイメージがなかったり、ご高齢の方は特に「施設」というフレーズにあまり良いイメージをもっておらず「身寄りのないかわいそうな人が行くところ」などと誤解していたりする場合もあります。

「終の棲家」として、一番人気があるのは「自宅」です。2020年に日本財団が行った調査によれば「人生の最期をどこで迎えたいか」という問いに、自宅を「最も望ましい場所」とした人の割合は58.8%と、6割近くにもなりました。反対に「絶対に避けたい場所」としては「子の家」42.1%と「介護施設」34.4%が挙がっています。「子どもに迷惑はかけたくない」「介護施設も嫌」というのが、多くの方の本音のようです。

「大切な人の最期を迎える場所」についても、そもそも「自宅」はあり得るのかどうかというところから、よくイメージしておく必要があります。あるいは自宅以外だとすると、具体的に今住んでいる地域でどのような選択肢があるのか調べ、できるだけ足を運んで確かめてみてください。昨今では、介護施設などの選択肢が広がった分、種類が多くて複雑に感じてしまうことも事実でしょう。そこで「小さな灯台」の視点(リビング・ウイルを尊重してくれる? 看取りまでしている? できている?)で代表的なところを簡単に整理してみます。

◎最期(介護~看取り)まで過ごせる場所にはどんなところがあるのか

安心してください。自宅を選択したからといって、自宅だけで背負うことはないのです。「在宅介護」をサポートしてくれる施設(看護小規模多機能型居宅介護や介護老人保健施設など)の選択の幅は広がりました。今後、ますます「在宅介護」中心でも、時々病院に入院、折々に施設を利用するスタイルが主流になるでしょう。

Ⅰ自宅

概要・メリット・デメリット

【メリット】

●住み慣れた地域・愛着のある家で最期まで暮らせる。
●家賃がかからない。
※訪問ケアの費用はかかることを意識する。
●介護保険外の私費の各種介護サービスを自由に使える

【デメリット】
●自宅の立地や間取りが生活スタイルと合わなくなり、介護度・看取り期にあわせてリフォームが必要。改修費がかかる。
・要介護者の車イス移動、介護する人のストレス緩和を考慮した空間の確保が必要。

対象・準備・費用

【準備】

●住宅の改修
※左記参照
●介護医療体制
・かかりつけの訪問医師。
・自宅で利用できるサービスをうまく組み合わせる。

【費用】
・初期費用…住宅改修費
・月額…介護サービス費
・保険外サービス費用随時
※平均5万円程度 ※1)

Ⅱ介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)公的施設

概要・メリット・デメリット

入浴、食事など日常生活の介助を受けながら暮らすことができる。

【メリット】
比較的費用が安い。

【デメリット】
地域によっては入居待機者が多い。

【対象】
原則、要介護度3から入居可能(実際には要介護4以上の人が中心)

【準備】
要介護2の判定が出たら、探し始める。

【費用】※2)
入居一時金…0円
月額…10~15万程度

Ⅲ介護医療院 公的施設

概要・メリット・デメリット

医療と介護のサービスが一緒に受けられる。

【メリット】
●医療と介護の両方のサービスが充実している。

【デメリット】
●費用が高い。
●多床室が多く、プライバシーが守られにくい

対象・準備・費用

【対象】
要介護認定を受けていること。
※実際には介護度が高い人、緊急性が高い人が優先される。

【準備】
入院中の場合には、院内の医療ソーシャルワーカーに相談。

【費用】※3)
初期費用…0円
月額…10~20万円程度

Ⅳグループホーム 民間施設

概要・メリット・デメリット

認知症専門の民間型サポート施設。
地域密着型サービスの一つ。
フロア9名までという少人数で、スタッフのサポートのもと家庭的な雰囲気の中で生活を送ることができる。

【メリット】
●認知症専門のスタッフが対応してくれる。
●プライベートが維持できる。

【デメリット】
●医療ケアに特化していない。
●介護度があがると退去しなくてはならない場合がある。
●定員が少なく、空きがないことも多い。
●共同生活が苦手な人には不向き。

対象・準備・費用

【対象】
65歳以上、要支援2または要介護1以上の認知症患者。地域密着型サービスなので、施設と同一地域内に住居と住民票があることが求められる。

【準備】
認知症と診断されたらすぐに探し始める。

【費用】※2)
初期費用…0~数十万円程度(入居一時金、保証金など)
月額…15~20万円程度

Ⅴサービス付き高齢者向け住宅 民間施設

※「サ高住(さこうじゅう)」と略される。

概要・メリット・デメリット

バリアフリー構造の高齢者住宅(介護保険法ではなく「高齢者住まい法」による)。

【メリット】介護保険と連携している。
●ケア職が日中建物に常駐して安否確認(状況把握)と生活相談を提供。
●施設数が毎年増加していて、入居待ちが少ない。
生活の自由度が高い。

【デメリット】
●元気な人のみを対象にした施設もあるため、住み替えの必要が出る場合もある。

対象・準備・費用

【対象】
60歳以上の高齢者または要介護認定を受けた60歳未満の方。
※要介護度合いによって「一般型」と「介護型」に分けられるが、ほとんどは「一般型」を利用。
※詳細な入居条件は施設によって異なるので自分で調べること。

サ高住【一般型】

上述の安否確認と生活相談のほかにも施設によって任意サービスもある。
●食事、洗濯、清掃などの家事援助
●身体介護は外部事業者への委託になるが、多くの施設は介護サービス事業所を併設している。

【デメリット】
●介護度が上がった場合、退去になるケースがある。

【対象】
自立~介護度の低い人。

【費用】※4)
賃貸借契約
初期費用…入居一時金なし
※敷金が数十万かかるところもある。
月額…5~25万円程度(家賃と管理費)

サ高住【介護型】

要介護度に基づいた定額制で施設に常駐している介護スタッフからサービスを受ける。

看取りに対応可能かどうかは施設ごとに状況が異なるので、看取りを希望する場合は、確認が必要。

【対象】
要介護度が高い方向け。

【費用】※4)
利用権契約
初期費用…数十万~数千万(入居一時金)
月額…15~40万円程度※(家賃・管理費・食費)

有料老人ホーム(住宅型)民間施設

入居者自身が、必要に応じて外部の訪問介護事業所等の介護サービス事業所と契約し、介護保険サービスの提供を受ける。

「自立型」「介護専用型」「混合型」がある。

【メリット】
●イベントやリクリエーションが盛んで、友だちを作りやすい。

【デメリット】
●介護度が高くなると退去しなくてはならないケースもある。

【対象】
自立から要介護の人まで幅広く受け入れている場合が多い。

【費用】※2)
初期費用…0~数百万円(入居一時金)
月額…15~30万円程度

有料老人ホーム(介護型) 民間施設

介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設。介護度別の定額で日常生活に関わる介護サービスを受けながら生活できる。

【メリット】
●24時間介護スタッフが常駐しているので安心。
●看取りまで対応するところもある。
●介護サービスが充実。
●「介護専用型」「混合型」「(一部)入居時自立型」があり、入居時の状態で選べる。

【デメリット】
●一般的に費用が高い。
●外部の介護サービスが利用できない。
●看取りまでするかは確認が必要。

【対象】
要介護度5まで受け入れ。

【費用】※2)
初期費用…0~数百万円(入居一時金) 
月額費用…15~30万円程度

Ⅷ介護老人保健施設 公的施設

「終の棲家」ではないが「在宅介護」には欠かせない公的サービス施設。

介護老人保健施設(老健)は、要介護高齢者(要介護1以上)の自宅復帰を目指すため、医師による医学的管理のもと、看護・介護を提供する公的な入居施設。作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、栄養管理・食事・入浴などのサービスまで併せて提供される。

【メリット】
●在宅復帰を目指すことが主眼。
●3~6か月程度の一定期間で退去することが前提。
●食事、入浴、排せつなどの身体介護や生活援助が行われる。

●医師、看護師、リハビリ等、専門職も充実している。

【デメリット】

●在宅復帰を目的としているため入所は3~6か月に限定される。

【対象】

主に医療ケアやリハビリを必要とする要介護状態の高齢者(65歳以上)

【費用】※3)

初期費用……0円
月額……8~14万円程度
*看取りまでする、できる老健施設が最近増えています。地域のケアマネジャーやかかりつけ医師や病院の主治医にあきらめないで相談すること。
地域と施設のケアマネジャーによる在宅介護を支える地域連携サービスのモデルとして活躍が期待されている。

【備考】

看護小規模多機能型居宅介護を利用すると「通い」「訪問」「泊まり」を同じ施設スタッフが担当するので、連続性のあるケアが受けられます。略称・看多機(カンタキ)は、医療依存度の高い人や退院直後で状態が不安定な人、在宅での看取り支援など、住み慣れた自宅での療養を支える介護保険サービスです。2012年に創設されました。主治医との連携のもと、医療処置も含めた多様なサービス(訪問看護、訪問介護、通い、泊まり)を24時間365日提供します。※介護医療院とは?*2018年介護療養型医療施設が廃止され、介護医療院という医療ケアと介護が必要な方が生活するための新たな介護保険適用施設が新設されました。

◎まとめ

▼高齢者向けの住まいはどんどん変化している

高齢者向けの住まいはどんどん選択肢が広がり、多様なニーズに応えようとしています。上述の表の同じ分類に属する施設であっても、個々の施設によってサービス内容も費用もまちまちです。例えば「ペットと一緒に暮らしたい」という希望をもっていたとすれば、それが可能な施設もあります。「人生のラストステージをこういうところで、こんなふうに生活したい」という希望がかなうよう、諦めることなく探してみることが大切です。そのためにも、地域の介護情報に常にアンテナをはり、余裕をもって準備をはじめましょう。

▼いつでも柔軟に、変化対応するのは当たり前

 介護や看取りは想定外のことが日々起こります。「特別養護老人ホームの空き待ちをしている間に、自宅介護が難しい状態まで悪化した」「問題行動が多くなり、施設から退去するよう言われた」など。特に身体状態の変化により、状況が二転三転することはしばしばです。

それで当たり前。「誰が~してレバ、何処が~だったカラ」と、誰かや何かを非難・批評するのは無駄なことです。目の前の“出来事”に、常に「では、どうする?」を考え、柔軟に対応できるよう対応策の引き出しを増やしておきましょう。「終わりよければすべてよし」。誰もが満足できる場所で最期を迎えられますように。

▼終の棲家(施設情報)のナレッジを集めよう

チェック&ピックアップ。そしてバックアップしていこう!

尊厳死協会支部活動の中で、支部の役員の皆様、会員の皆様の地域情報は大変貴重です。上の施設の分類を参考に、地域でのさまざまな施設の情報を集めましょう。ネット検索だけではわかりにくいホスピタリティの度合い、リビング・ウイルに理解のある施設であるか?看取りまでしてくれる施設であるか? リビング・ウイル受容協力医師がいらっしゃる施設か?などは、会員にとって重要なチェックポイントです。ハザードマップのようなガイド情報が各地域でそれぞれ作れると何かと心強いと思います。それこそACジャパンの流行語「たたくより、たたえ合おう」のマインドを発揮して「優しい看取り」につながるように。「小さな灯台プロジェクト」は、意思ある最期「リビング・ウイル」を希望する会員の皆様・そのご家族、そして医療ケア職者との間に立ち、お互いの情報の橋渡し役を果たしていきたいと考えています。

◎参照元URL・参考サイト

※1)「在宅介護のお金と負担2016年調査結果」(公益財団法人 家計経済研究所)
※2)学研ココファン https://www.cocofump.co.jp/articles/kaigo/13/
※3)いい介護 https://e-nursingcare.com/guide/cost/roujinhome/
※4)ライフル介護
https://kaigo.homes.co.jp/manual/facilities_comment/list/house/service/cost/
※5)厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索(介護サービス情報公表システム)
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/readme/
※6)サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム
国土交通省・厚生労働省の所管事業。全国のサービス付き高齢者向け住宅、全件が掲載されている唯一のサイト。住宅の基本情報は、地方公共団体が審査承認。
https://www.satsuki-jutaku.jp/