尊厳死を希望する親の家族が直面した「困難の数々……」

遺族アンケート

81歳母/看取った人・娘/東京都/2021年回答

母が大変お世話になりました。貴協会の理念は、母の「終わりの理想」の具現であり、間違いなく「心のよりどころ」でありました。娘の私も、感謝の思いが深く……だからこそ、今後の貴協会の更なる発展を願う一員として、ここに私……尊厳死を望んだ者の家族が直面した、ある「難しさ」を記すことをお許しください。

(以下長文のため最小限の要約をさせていただきました。)

『自分らしく自然に生き、自分らしく自然に死ぬ』が、母の絶対信条

病院を嫌い、健診自体連れていくのに(説得に)5年かかったほど。当然お医者様方には良い印象をもっていただけず、殊に、家族への対応は冷ややかで露骨に嫌な顔をされたのも一度や二度ではありません。娘の私はずっと母と医師との板挟みでした。

医療行為(検査を含めた)のどこまでが必要で、どこからが「自分らしく」を損ねるものなのか……。その線引きは家族でも、いえ、物心ついた時から本人の生き様を見てきた家族だからこそ本当に難しい問題でした。

客観的事実として、母は81歳、すい臓ガンで逝去(発見時には、末期中の末期でした)。症状が出るギリギリまで食べ、仕事をし、車も運転-つまりは普通の生活を送り3か月半の自宅療養の後、私の腕の中で亡くなりました。

1年前のあの時、娘の私が首に縄をつけてでも精密検査に連れて行っていればもっと寿命が延びたのか……? でも、だとすると入院は避けられなかっただろう。コロナ禍の面会不可の病院で逝く不幸を回避できて幸せだったのか……? 何が正解だったかはわかりません(神様にしかわからないでしょう)。

しかしながら、

●現実に「尊厳死」の解釈が検査・健診の拒否につながるケースがあったこと。

●そして、それに戸惑う家族と親身にコミュニケーションをとってくださる医師・機関の存在がなかったこと(ケアマネジャーさんや病院関係者は「正論」を示されるだけでした)。

これらを踏まえて、より良い「尊厳死」の在り方を模索していただけたらと存じます。現代、老親を抱える子どもは兄弟数が少なく私のような一人っ子も珍しくありません。親の思考力が衰えていく中、何事においても意思の実現には家族の支えが不可欠になっていきますが「死生観」という極めてデリケートな問題において「家族が」相談できる専門の窓口があったら……と願わずにはいられませんでした。

あと、これは可能であればですが、

●「尊厳死」とは密接な関係にあるペインコントロールや緩和ケアの病院・医療施設のリスト等の配布があると、本人も家族も安心できると思いました。

勝手なことを長々と申し訳ありません。

貴協会の明るい未来を心からお祈り申し上げます。どうかこれからも「人の思い」に寄り添われることを大切に、誰しもが迎えるエンディングのその温かな光となってください

このアンケートが僅かでも貴協会のお役に立つことを願って。ありがとうございました。

協会からのコメント

大切なご指摘とご提案をいただきました。

  1. 尊厳死の解釈が、延命処置だけでなく検診・検査の拒否につながるケースがあった事実。
  2. 意思ある最期(リビング・ウイル)を希望する人を支える代諾者(家族)を支える相談機関が欲しい。
  3. 緩和ケアに関する医療機関、施設の情報やリストがもっと欲しい。

ということですね。まさに大切な気付きであり、ご提案です。

「小さな灯台」はしっかり受け止めさせていただきます。今後、ご一緒に発展的な取り組みをしていきましょう。

「意思ある人がその意思を全うする」ためにはそれをサポートしケアする人が必要です。それは1セットであり、困難は意思ある人だけに降りかかるのではなく、それをサポートする人も同じ困難を被るものです。ガンの病気治療を、患者さんだけに着目していた医療者たちが「家族も同時に病み、苦悩する。その家族へのケアや医療介入も必要だ」と気が付きはじめて、今、世界各地、日本各地、病院、NPO団体等々、さまざまな試みがなされています。

参考例としては

(認定NPO法人マギーズ東京〒135-0061 東京都江東区豊洲6-4-18 TEL. 03-3520-9913 FAX. 03-3520-9914(平日10時~16時)メール:soudan@maggiestokyo.org 等々
 親子といえども価値観は異なります。価値観が異なれば苦悩も深まります。価値観は違っても尊重できる道筋をご一緒に探し求めてみませんか? ともあれ、お母様はご自分の信念を貫くことができました。それは間違いなく娘さんが最期まで寄り添い、サポートし続けてくださったおかげです。そのことに自信をもってください。そしてこの投稿を、より多くの方々に知っていただき、この3つの気づきが具体的な動きにつながるように「小さな灯台」はその役割を果たしていくことをお約束します。こちらこそ、投稿してくださりありがとうございました。