コロナ禍で、付き添うことも先生とのお話も十分できず…

遺族アンケート

83歳夫/看取った人・妻/北海道/2021年回答

夫婦ではよく話し合い、リビング・ウイルも常に書いておいて覚悟はしっかりともっておりました。私たちには子どもがおりませんので、2人の心中は1つでしっかりとしておりました。ただ、今回の主人のことは思考がしっかりとしていて、治療中でありながら、まだ2、3年は頑張りたいと言っていたのですが、黄疸、気胸と次々に具合が悪くなり、緊急入院・手術となって10日後にアッと言う間に永眠となりました。

とても残念だったのは、今のコロナウイルス騒動で、付き添うこともできずに先生とのお話も深くできずに主人が尊厳死のことを言ったかどうかはわかりません。私はリビング・ウイルを渡すことはありませんでした。

協会からのコメント

コロナ禍の入院中「付き添うこともできず、医師とのお話も深くできずに、主人が尊厳死のことを言ったかどうかはわかりません。私はリビング・ウイルカードを渡すことはありませんでした」という言葉に胸打たれます。

今、どれほど多くのご家族が同じような想いをされていることでしょう。

「死」は時に、思わぬ形で現れ予測不能なことが多々あります。緊急入院で治療中の夫は回復を期待していたことでしょう。会えずいた妻にとっては悲しく苦しい結果となりました。

医療者は、常に患者にとって最良となるように考え治療していますが、コロナ禍のように、予想しえない事態の中では、どこも試行錯誤の連続です。病院と患者、家族の心情をつなぐ試みも多種多様な実践がなされています。

研修医が、患者さんの病状を毎朝家族に伝える手段を講じた病院。外来にご家族からの見舞い品、伝言を受け付ける専用窓口を新設したり、ZOOM等IT機器を駆使したサービス体制をいち早く敷いた医療施設なども……。

どんな対処法を採用しても、応じきれない事態、予想した結果にならない苦渋が積み重なっていることは想像に難くありません。

だからこそ、入院中や退院後(お亡くなりになった場合の退院であっても)、機会をとらえて担当医や看護師と面談して【気持ちを伝えること】をお勧めします。薬や体の変化だけではなく【気持ち】も伝えるのです。その一つ一つが医療者にとって、次の危機的事態の備えになり、対処した対策の効果検証の根拠にもなるからです。

医療・ケア職者もご家族も、コロナ禍のその後の対応策を今から心しておきたいものです。