【情報BOX】尊厳死を希望する人の代託者になるあなたへ−親の“老い”と向き合う時に役立つ《老い知識》のすすめ No5 老化による聴覚・聴力の変化とは? その2

前回は、老化によって聴覚・聴力になぜ、また、どのような変化が起こるのかについてお伝えしました。

今回は、聴覚・聴力の衰えにどのように対応したらいいのか、高齢者への接し方・話し方のポイントや補聴器の活用などについてお伝えしたいと思います。

◎聴覚・聴力の衰えにどう対応する?
▼「誰にでも起こること」と理解する
まずは、聴覚・聴力の衰えは「誰にでも起こること」と認識し、あまり深刻になりすぎないことです。できないことを嘆くよりも、できることを積極的に取り入れていきましょう。できることはいろいろとあります。

「程度の差はあるが、高齢者の多くは聴覚・聴力に衰えがある」と認識して、周りの受託者や医療・ケアにかかわる関係者が接し方・話し方のスキルを身につけることもその一つです。

フランスで生まれた「ユマニチュードメソッド」という認知症者へのケア技法があります。「ユマニチュード」はフランス語で「人間らしさ」を意味し、このメソッドは「人間らしさを取り戻す、尊重する」ことを実践するものです。

ユマニチュードメソッドでは、「正面から目線を合わせて話すこと」「安心感を与える低い声で大きすぎない声量を意識すること」「耳が遠い患者には聞こえる程度の声量で話し、必要以上に大きな声で話すことは避ける」と推奨されていて、接し方・話し方の参考になります。

また、高齢者はパ行、タ行、カ行、サ行が特に聞こえにくいといわれています。「高齢者には聞こえにくい音がある」と認識し、相手に一歩近づいて、なるべく正面からちょうどよい音量でゆっくりと話してみましょう。

▶︎日本ユマニチュード学会 https://jhuma.org/

▼補聴器を活用する
現在のところ、「低下した聴力を元通りに戻す」治療方法は残念ながらありません。できる対応は、「聞こえなくなった聴力を補う」ことになります。聴力を補い、会話の聞き取りを助ける道具である補聴器を上手に活用することが有効です。

補聴器にはさまざまな種類がありますが、人によって難聴の程度や必要な場面が異なるため、本人のニーズに合ったタイプを選択することが大前提です()。

補聴器の種類には、大きく分けて「耳かけ形」「耳あな形」「ポケット形」があります。耳かけ形は小さく、耳にかけて使用します。操作が簡単で種類や性能も豊富なのが特徴です。耳あな形は、耳あなの中に収まるタイプです。目立ちにくく、耳の形や難聴の程度に合わせたオーダーメイドが一般的です。ポケット形は本体とイヤホンをコードでつなぐタイプで、比較的安価で操作が簡単です。

難聴の程度と補聴器の種類
(日本補聴器販売店協会:聞こえのしくみと補聴器より)

今は商品の改良が進み、新製品がたくさん出ています。例えば、小型で多機能、騒音や不快な音を抑えるデジタル補聴器、教室など広い場所でも聴きやすいFM電波を使ったFM補聴器、頬骨や頭骨を介すことで耳あなに負担をかけない骨伝導補聴器、汗に強い防水補聴器などです。詳しくは、各メーカーHPでの商品紹介が参考になります。

さまざまな補聴器の特徴を知って、難聴の程度、用途や場面などに合った補聴器を使いましょう。仕事の時だけ、スポーツをする時だけなど必要な時に限定するのも賢い使い方です。

▶︎日本補聴器販売店協会 https://www.jhida.org/
▶︎日本補聴器工業会 http://www.hochouki.com/

◎まとめ:聴覚・聴力の衰えと上手に付き合おう
コロナ渦の今、マスクによって相手の声が聞き取りにくいという体験を誰もがしていると思います。ソーシャルディスタンスによって相手との距離が遠いうえ、助けとなる口元の動きも見えません。お店で商品を注文する際に、店員さんの言葉を聞き返す、逆に店員さんに聞き返されることがよくあります。

難聴の状態を先取りで体験しているような状況ですが、受託者や医療・ケアにかかわる関係者がマスク越しに高齢者と話す場合、相手の正面でゆっくりと話す、なるべく雑音のない環境で話す、資料やジェスチャーなど視覚的に内容を補う、可能であれば口元を見せる、などの工夫が助けとなるのではないでしょうか。また、マスク越しのこもった声がクリアに聞こえるマスクモード搭載の補聴器も出てきています。

本人に合った方法で難聴を補い、聴覚・聴力の衰えと上手に付き合っていきましょう。