娘としての責任を果たせて良かった

遺族アンケート

91歳父/看取った人・娘/神奈川県/2021年回答

1年半ほど前、施設で看取り体制が整い、嘱託医と面談。書面をかわした際、口頭でリビング・ウイルを伝え(カードは施設で保管のため)、施設での看取り希望を伝えました。2回目コロナワクチン接種日の翌日の夜発熱、酸素濃度低下、その次の日の夕方、入院を相談員に勧められましたが、入院はせず施設での看取り希望を伝え、医師の了解を得ました。コロナ禍、面会は謝絶中でしたが、特別措置で約半年ぶりに面会。1日5~10分の面会を許され、約1か月後に旅立ちました。

細かい経緯は省きますが、途中で水分補給の点滴を1週間することになり、点滴を止められないか施設看護師より医師に確認していただきましたが「回復の見込みがあるので続けます」と断られました。結局、回復は見込まれず1週間で中止、それから10日後に静かに旅立ちました。20年近く認知症で、入会のキッカケも母の意志に従って夫婦で入会したので、本人に改めて確認する機会はありませんでした。ですが、私自身は父が母と同様にリビング・ウイルを希望していると信じて願いをかなえられるようにしたいと思うことで、感情のゆれは多々ありましたが、救われることも多かったと思います。私自身も協会に入会しており、両親の看取り、兄の旅立ちを通じて、さまざまな気付きを得ております。

やはり、点滴を止めることができたら良かったのかもしれない……との思いはあります。その後悔を私の看取りに関わるであろう人たちに与えてはならない、と思うので、私自身は「点滴は受けない(たとえ回復の見込みがあったとしても)、口から入るものだけで」と意思表示しようと強く思いました。母の時の後悔は二度としたくないとの思いが強くあり、もちろん何の後悔もないというわけにはいきませんでしたが、少なくとも母の時よりは、医師や施設に対して希望を伝えることができたので(特に入院を断ることができた時は)良かったと思います

父一人娘一人ですので、私が先に逝くわけにいかず、その点では心底安堵しました。悲しみや寂しさより、娘として責任を果たせて良かったという気持ちの方が強いかもしれません。

日に日に痩せ細り、衰弱し、旅立ちに近づいてゆく姿を見るのは、とてもつらく切ないことでした。けれども、同時に父の生命力の強さに感動し、尊敬し、また父は人が本来あるべき終末期を過ごせているのだ、私は聖なる時間を共に過ごしているのだとも感じていました。

私も願わくは苦しまずに枯れるように静かに旅立ちたいと思います。今後もどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

協会からのコメント

「日に日に痩せ細り、衰弱し、旅立ちに近づいてゆく姿を見るのは、とてもつらく切ないことでした」という言葉から、家族だけで看取ることの困難さが良く伝わってくる「看取りのエピソード」です。

「本来あるべき自然な終末期」を過ごすにも、施設などの多くの関係者の見守りや、家族への親身なサポートがある環境が必要なことを、多くの人々に理解してほしいものです。たとえリビング・ウイルが明確で、本人の希望に沿った経過をたどっている看取りにおいてもです。

本当に、立派に「娘としての責任」を果たされましたね。共にお父様のご冥福をお祈りします。くれぐれもご自愛ください。