治療と延命措置のラインのあいまいさを実感しました

遺族アンケート

86歳母/看取った人・娘/神奈川県/2021年回答

介護施設に入所していた86歳の母は、肺炎で突然救急搬送されました。心臓人工弁置換手術と慢性心不全のためのペースメーカー手術既往があったので、循環器内科への入院となりました。

私が病院に着いた時には、集中治療室で加圧式酸素マスクを装着されていました。担当の先生は母自身が口頭で伝えたリビング・ウイルに理解を示してくださり、さらに悪化しても人工呼吸器は付けないと約束してくださいました。4日後、加圧式酸素マスクが取れ、鼻からチューブで送る酸素のみになった時、先生から「いつ再悪化してもおかしくない状態ですが、次は加圧マスクはどうしますか? 一生着けたままになることもあります」と言われ、びっくりしました。

人工呼吸器からが延命処置になると思っていましたが、場合によっては酸素マスクもその範疇に入るのだと初めて知りました。母は話すことができたので、希望通り加圧マスクはもう着けないということになりました。

その後、身体中のほとんどの点滴ラインがつぶれて、ダメになってきた1)時、かなりつらかったようで、母はそれ以上の新たな点滴ライン確保を拒否しました。それは、ある程度治療を拒否することを意味しているので、急性期病院ではとても聞き入れていただけないだろうと思われました。ところが予想に反して、他の先生方とも相談の上、点滴なしになるかもしれないことを承諾してくださいました。

ひどい症状となった時には、強い麻薬で眠るようにして苦しくないようにするともおっしゃってくださいました。母の希望に沿って、ここまでリビング・ウイルに理解を示してくださる先生方を本当にありがたいと思いました。1か月後、母は以前から悪かった心臓が突然止まり、亡くなりました。

今回、治療と延命処置のラインのあいまいさを実感しましたが、基本は本人の気持ち次第と理解しました。母の希望が聞き入れられたのも、尊厳死協会に入っていたおかげと思っています。

編集部注:
1) 点滴ラインとは点滴をする血管のことです。繰り返し点滴の針を刺すことで、血管の壁に弾力がなくなって針が刺せなくなり、点滴できるところが少なくなっている状態です。

協会からのコメント

在宅医療を選択するなら、救急車は呼ばないで、自宅で看取りましょう……というのが「小さな灯台」が啓発していることの一つです。では、介護施設からの救急搬送は? もし、看取りもする体制が整えられている介護施設なら救急搬送しただろうか? と考えさせられる「看取りのエピソード」です。

ともあれ、緊急入院した病院の医師にリビング・ウイルを理解していただき、本人の意思を最大限尊重する医療を受け、最期を迎えることができたことに、ご家族と共に安心しました。詳細を投稿していただきありがとうございました。きっと、多くの方の参考になると思います。