毎朝夫に「早く死にたいね」と言いながら生死を確かめる異常な日々

遺族アンケート

75歳夫/看取った人・妻/神奈川県/2021年回答

4年前の脳梗塞から要介護5でしたが、デイサービスを利用しながら、家で元気に暮らしていました。気管切開でカニューレ1)を入れ、言葉は出ませんが意思は通じていて、二人で穏やかな生活を送っておりました。

永久気管孔2)の手術後、6か月過ぎて完全にカニューレをはずして11日目にレスパイト入院3)、1日目の夜、痰がつまって心肺停止になり、95%の脳死を宣告されました。人工呼吸器をはずせば殺人と言われ、リビング・ウイルの会員であることを告げても、栄養を与えないということのみで半月ほど入院(そのうち10日は泊まりこむよう言われ、心身共に疲れ果てました)。在宅看取りのため退院し、家で3週間は水も断ちましたが、59日間(そのうち家で45日間)、全身の水分がぬけて心臓死を待つというあまりにむごい死を待っていました。

週2回の入浴も朝晩の看護師さんのケアもとてもありがたかったのですが、毎朝夫に「早く死にたいね」と言いながら生死を確かめる異常な日々でした。思い出したくもなく、病院関連の書類はみな捨ててしまったので医師の名前を忘れました。もしかしたら、私の時は役に立つかもしれないので会員は継続しますが、最後は医者の手にかからぬようにするにはどうすれば良いかを模索しています。

編集部注:
1) 気管などに挿入する太めの管のこと
2) のどを切除する際に呼吸のためにあける孔のこと
3) 看護している家族に休息をとらせるための入院

協会からのコメント

尊厳死協会の会報「Living Will」No.182(2021年7月発行)でも取り上げた倉本聰氏からの緊急提言「そしてコージは死んだ」に匹敵する医師および病院の医療体制の不備を痛感させられる「看取りのエピソード」です。「毎朝夫に“早く死にたいね”と言いながら、生死を確かめる45日間の日々」とは、なんとむごいことでしょう。

つらい大変な体験を、よくぞ投稿してくださいました。
医療では予期できないことが起こるとはいえ、救命処置をした後の検証と検討はなされたのでしょうか? その経緯をもとに、家族の要望で在宅看取りという形にしたのでしょうか? それならそれで【在宅看取り】への手厚いケアのシステムとノウハウが手立てされるように、今こそ真剣な施策が必要です。

先にあげた会報「Living Will」No.182にて、岩尾總一郎理事長も、尊厳死を受け容れてくれる医師との出会いが「『運次第』の現状を変えたい」と題して「国会議員、医療界、医学教育界に向けて声をあげ活動を進めていく所存です」と明言しています。

「小さな灯台」は、ここにこんな実例があると記録保存して、協会活動の資料として活かされるべく、イザという時に備えます。そして「意思ある最期を全うしたい」人のための「安らかな最期」が誰にでも可能な「死の臨床」の充実のために、役立てていきましょう。お気持ちしっかり受け止めました。引き続き会員であることを選択してくださったことに心からの敬意と感謝を申し上げます。

会員の皆様、それぞれに「残念な看取り体験」を振り返るのはつらいことでしょうが、できる限りご投稿をお願いいたします。