加療続ける? やめる?

遺族アンケート

85歳母/看取った人・娘/東京都/2022年回答

尊厳死を希望していることを入院時や施設入居時に医師に口頭で伝えるだけでしたが、どこでも、すぐに理解し受け入れ尊重していただけました(心なしか、歓迎? された印象もあります)。一方で、亡くなる前半年ほどは入退院を繰り返す状態で、体調を崩し、入院する度に「加療するか?(本人が尊厳死を望むなら)」を確認されました。脳卒中や心不全などではなかったため、回復の見込みがあるなら、痛みのない範囲で加療を希望しましたが、加療をどのタイミングで継続しない判断をするのか難しいと感じました。

協会からのコメント

「加療」するかしないか? という表現も、初めて耳にする方々も多いかもしれません。

リビング・ウイルは、回復できる治療を拒否するものではありません。家族が「回復の見込みがあるなら、痛みのない範囲で加療を希望」するのは当然のことです。尊厳死を希望している方には、体調不良の原因・治療方法の説明がまずあり、治療による苦痛が大きく回復が難しいと医師が判断した時、医師が家族にも理解できるように丁寧な説明がなされます。そして、本人・家族が選択・決断するという流れを、医師及び現在の医療は大切に努力しています。この説明と合意のプロセスをインフォームドコンセント注)といいます。「加療しないこと」イコール「死に近づく」というイメージは事実です。でも、加療が結果的に死期を早め苦しい時間だけが過ぎることを、多くの医療者たちが経験し、「尊厳死」という「意思ある人生の選択」に寄り添う治療法が模索されるようになったと理解していただきたいものです。いずれにしても、患者さんご本人、ご家族の覚悟が必要なことは言うまでもありません。誰にでも「いつかはあること」なのです。

「人生の最終段階における治療方法の選択」というのが、救命救急時の選択だけではないことを知らせてくださる大切な「看取りのエピソード」です。

編集部注:
インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである。
インフォームドコンセントは、ただ単に病状を告げ、同意書をとることではない。日常の場面においても、患者と医療職は十分に話し合って、どのようなケアを行うか決定する必要がある。
(日本看護協会「インフォームドコンセントと倫理」より引用。
https://www.nurse.or.jp/nursing/rinri/text/basic/problem/informed.html
2023年12月8日アクセス)