何もしないことは見捨てることになるのでは? と葛藤

遺族アンケート

93歳母/看取った人・娘/大阪府/2022年回答

施設に入居して2週間で急に意識がなくなり、救急車を呼んでも時間がかかること、この状態だと植物状態になることを施設長に告げられました。娘、息子と話し合いましたが何とか助けたいとの思いは一緒でした。東京の弟にも連絡し、私がいつも介護していたので、私が決定することになりました。何もしないことが母を見捨てることになるのでは! 私にそんな権利はない! さまざまな葛藤がありました。手を握ったり、話しかけたりで5時間後、本当に静かに息をひきとりました。これで良かったのか、正解はわかりませんが、母は何にもつながれないまま亡くなり、母が思った通りの最後だったと思います。でも、決めたのが私自身であったので、心の負担感は大きなものでした。百か日を迎えましたが、その思いはまだ引きずっています。でも母がカードを持っていたので、その意志を貫いてあげられたと思います。施設長が救急車を呼んだら、救命のため挿管するので、それは病院で医師は管を抜くことは殺人になるのでできませんと言われたことが印象に残っています。

本人の意志が記されていても病院では活かされないことは、どうなのでしょうか。私も母の死について心の整理ができたら貴協会に入会したいと思っております。

協会からのコメント

「手を握ったり、話しかけたりで5時間後、本当に静かに息をひきとりました」と、何より素晴らしい「看取り」を体験されましたね。
*コロナ蔓延防止下で、意識消失後救急救命を依頼しても93歳という年齢では、実際何をしたのでしょうか。挿管し人工呼吸器につないでも救命はかなわなかっただろうと思います。

救急車を呼ばないことを勧めた施設長の選択は正しかったのです。

「何もしないことが母を見捨てることになる?」のではないのです。治療(薬や手術・延命措置)をしなかったからといって「何もしなかった」ことにはなりません。「日ごろ介護されていたあなたにそばに居てもらい、息をひきとれた」のはご本人にとって最高のケアになったと思って良いのです。

よく終末期の医療について「治療はできないけれどケアはできる」と言われるのはこのことなのです。

「手を握り消えゆく命を見守る、つらいけれどとても濃く大切な時間を共に過ごす」ことは最高のケアです。「母の意思を貫いてあげられた」という思いをこれからの大きな心の糧として、ご自身の自信につなげてくださるように願っています。

お母様のご冥福とご家族の健康をお祈りしております。くれぐれもご自愛ください。