家族間で想いが錯綜して物別れに

遺族アンケート

85歳父/看取った人・息子/三重県/2022年回答

尊厳死協会様におかれましては、大変意義のある行いをご提供いただき、誠にありがとうございます。私が父の終末期前にリビング・ウイルを勧めた際、姉夫婦と母から反対を受けました。以前から延命治療は避けたいと家族で話していたのですが、いざとなると想いが錯綜することとなりました。姉夫婦と母の言い分は、父親が生きようとする気持ちを削ぐとのことでした。何度説得しても「本人に伝える時期が遅い」と言い納得しませんでした。最後は物別れとなり、長男で跡取りとなる私の意見を押し通してリビング・ウイルを決めました。

時期というのも難しいのですが「病院信者」である姉夫婦と母を説得する難しさを痛感いたしました。「病院にまかせておけば大丈夫」「本人が最期を知らない方が幸せ」などと言っておりましたが、延命治療ほど残酷なものはないと考えております。私はリビング・ウイルを決めて本当に良かったと思っております。ありがとうございました。

協会からのコメント

「病院や医師にお任せします」「自分の最期は知らさない方が良い」という医療に対する考え方は、すでに20世紀で終わったことになっています。21世紀になった今、地域や病院に関係なく全ての人が「自分の余命と予後を知り、最終的な治療方法を選択する」のは「本人の意思の尊重」のもとになされることになりました。この選択までの、説明と合意のプロセスをインフォームドコンセント注)といいます。

その医療の流れが、まだまだ市民のおひとりおひとりまで浸透しきれていないのも事実です。そのために家族の共通の理解と同意をはかるのは至難の業です。家族のキーパーソンになられる方々のご苦労が目に見えるようです。

「病院信者」とは病院の何を信じているのでしょうか。病院にいれば本人の苦しいところや汚いことに関わることがなく安心? いわゆる「臭い物には蓋」をしたい、決断から逃げたい人々の思考は変わらない「人のさが」でしょうが、すでに時代は変わったのです。

より多くの方々に「リビング・ウイルを決めて良かった」と思っていただけるように「小さな灯台」は、会員の皆様と共に努力を重ねてまいりたいと思います。

編集部注:
インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである。
インフォームドコンセントは、ただ単に病状を告げ、同意書をとることではない。日常の場面においても、患者と医療職は十分に話し合って、どのようなケアを行うか決定する必要がある。
(日本看護協会「インフォームドコンセントと倫理」より引用。https://www.nurse.or.jp/nursing/rinri/text/basic/problem/informed.html
2023年12月8日アクセス)