施設でも訪問診療&訪問看護は可能
【遺族アンケート】
(96歳母/看取った人・娘/福岡県/2023年回答)
母は昨年秋に誤嚥性肺炎で、施設から病院に緊急入院いたしました。病院では抗生剤入り点滴によって3日で発熱もおさまりました。でも、コロナの影響で面会も不可能な状況でしたので、なるべく早く退院させ施設に戻したいと思いました。
病院の治療は点滴の量も多く、痰が出て母にとっては苦痛でした。元の施設では、訪問診療の医師と訪問看護師さんと医療面のサポートがあれば受け入れOKとのことでした。
その間、貴協会様には点滴の量等で電話相談にのっていただきました。力をお貸しいただき、大変心強く心も軽くなりました。退院の前に、医師のところに訪問診療のご依頼に伺い、その折に母の尊厳死の希望をお伝えし、会員証、リビング・ウイルを提示いたしました。
医師には快く了解をいただき、無事に入院10日目に退院→元の施設に戻りました。それから施設の方の見守り、毎日の訪問看護、週一の医師の往診、毎日の少量の点滴、医師のおすすめの comfort feeding ※)という考えにそった1日1回のゼリーなどのおやつで、苦しみもなく今年の1月に老衰で亡くなりました。
私も毎日無制限の面会ができ、満足なお看取りができました。自分の亡くなり様をおおかた前もって決めておくリビング・ウイルは、残された家族にとっても本人にとっても安心なことと思います。本当にありがとうございます。乱筆失礼いたしました。
編集部注)
comfort feeding(コンフォート・フィーディング)……栄養よりも食べる楽しみを重視するという考え方
【協会からのコメント】
超高齢者の誤嚥性肺炎に対する医療(治療)の方法が、急性期病院、介護施設そして在宅での訪問診療と、立場が違うと治療とケアの方法が違うことを知っていただくとても良い「看取りのエピソード」です。
さらに、訪問診療は、必ずしも自宅でなくともよいのです。介護施設を終の棲家として選択された方には、その施設に出向き、訪問診療を果たすことができます。
今は、「黙っていても、考えなくても、自然に誰かが、なんとかしてくれるだろう」ではなく、ご本人が「エンドオブライフ・ケア」に何を希望するか? ご家族が大切な人をどこで、看取りたいか? を「選択」する時代なのです。
患者さん(高齢者は特に)も、関係するご家族や友人、知人も、医療ケア職とともに、三位一体となってそれぞれが「意思決定と選択」をして、お互いに支え、話し合いを繰り返しながら希望をかなえていくプロセスが必要とされています。
患者さんご自身と介護するご家族、もしくは代諾者(代弁者)が、それぞれの意思を明確にして希望すれば、それによって医師の診療の姿勢も、治療薬の処方も変化対応が可能であり、それぞれの人々の希望がかなう、幸福な看取り(エンドオブライフ)も可能になってきています。
地域包括ケアが目指す医療・看護・介護の新しいビジョンについて、医療やケアを受ける立場の人々にこそ、もっともっと学習の機会をと願わざるを得ません。
これからも「小さな灯台」は「看取りのエピソード」をとおして、医療・ケアの変化をご理解いただけるようご紹介の仕方を工夫してまいります。
ご投稿いただき誠にありがとうございました。