最期の時を家族だけ過ごせる部屋を用意してくれた病院

【遺族アンケート】

85歳夫/看取った人・妻/神奈川県/2023年回答

治療にあたって「小脳出血とは、全身の機能が動かなくなって、いわゆる植物人間になってしまうことですね」と先生に聞きました。先生は「そうです」と答えてくれました。

しかし「患者さんは、出血した血を抜いてあげると少しは楽になると思いますが」と言われましたが、植物人間が元に戻るわけがないので、「私たち夫婦は『尊厳死協会』に入っていますので治療はしないでください」と伝えました。先生は「わかりました。治療はしません」と。私はその代わりに「息子夫婦が来ますので心臓は動かしておいてください」と頼みました。先生は「わかりました。家族で過ごす部屋を用意しますので、そちらの部屋へ行ってください」と。

主人は一晩その部屋で過ごし、翌日の朝、早めに病院に来てくださいと連絡があり、その日の16時23分に息を引き取り天国へと。尊厳死協会に入っていたことで無理な治療をせず、そして、なおかつ家族で過ごす部屋を用意してくれて、とてもありがたかったです。優しいとてもきれいな顔でした。ありがとう。乱筆でごめんなさい。

【協会からのコメント】

最期の時間・人生をどう過ごしたいかを考えた結果、治療はしない」と決断したご家族を受け容れ、病院の中で、最期の時をご家族で過ごせる部屋を用意してくださったという「看取りのエピソード」です。

「看取り」とは、無理な延命治療を行うことなく「人間の尊厳」を保ったまま亡くなるための支援をすること、と「小さな灯台」は提唱しています。

21世紀の医科学は、薬も手術も治療法も驚くほどの進歩を遂げています。だからこそ、どこまでも命をつなぎ、「治すこと」を目指すこともできます。また「治療しない」という選択をすることもできるのです。

どちらにするかは、医師ではなく、患者・家族の選択と決断に委ねられてきているという医療事情の変化(パラダイムシフト)を知る人が、実は、あまり多くないのです。

そのような医科学の進歩に呼応して、今、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング=人生会議)をしましょう」と、盛んに勧められています。

ACPとは「患者さんの選択・決心・決断による治療方法」を、医師をはじめとする医療介護従事者が協力して「あなたの選択が達成できるようにサポートしますよ」と宣言する意味もあるのです。

繰り返します。
「看取り」とは、無理な延命治療を行うことなく「人間の尊厳」を保ったまま亡くなるための支援をすることです。

その支援の方法は、人の数だけさまざまです。その納得の支援を得られた実例の一つをここにご紹介できるのは「小さな灯台」の誇りです。 

ご投稿ありがとうございました。ご冥福をお祈りしております。