救急の現場で揺れる家族の判断
遺族アンケート
87歳父/看取った人・娘/東京都/2024年回答
父は尊厳死協会に入会し、本人からもその意思を日頃から聞いていました。しかし、父は自宅で昼寝中に息を引きとり、それを発見した家族がかかりつけ医(この先生には、必要以上の蘇生措置はしないでほしいと伝えてあった)に連絡せず、救急車を呼んでしまい、ある程度の蘇生措置はされてしまったようです。
最終的に、父のはっきりした死因はわからず、心不全となりました。幸い警察からの簡単な聴取のようなものはありましたが、解剖に回されることはありませんでした。
救急隊の方は、立場上、蘇生措置をしないといけないようでしたが、病院に到着してからは、家族が皆、父の意思を聞いていたので、人工心肺などは付けない(たぶん、すでに時間も経っていたと思います)本人の意思を受け容れてもらえました。
一つ思うことは、いざという時は、家族は動揺し、119番に電話をしてしまうということです。(年齢的なこともあり、本人の意思は受け容れられたと思っています。疑われたりすることはありませんでした)どこで、どのように、倒れるかによって、リビング・ウイルカード(一応、財布に入れてありました)の効力は変わってくると感じました。
父は自宅のベッドの上で昼寝中に最期を迎えられ、本当に幸せな人生だったと思います。
協会からのコメント
リビング・ウイルカードを持っていても、その時、本人は表現できないし、家族や身近にいた人々は動揺して当たり前です。むしろその事態を前にして、恐れず、逃げずに救急車を呼ぶことは、人としての責任を果たすことであり、責められることではありません。
また、たとえリビング・ウイルカードを示されても、現在の法律では救急隊は「心肺停止状態の傷病者に対する心肺蘇生が必須の業務」として位置付けられていますので、何もしないわけにはいかないのです。
理想は、状況によりリビング・ウイルカードの効力が変わるのではなく、どんな状況であってもリビング・ウイルカードが効力を発揮する法的制度が整うことでしょう。
今、まさにその法改正の議論がなされていますが、今の救命救急医療の課題が浮き彫りになった「看取りのエピソード」をご投稿いただき、ありがとうございました。今後は、「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」注)の方向性と法改正の議論のプロセスと結果を注視していきましょう。
編集部注)【参考】
「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」の案にTLT(タイム・リミテッド・トライアル)=一定期間を区切って生命維持を含む積極的治療を試行し、その効果を評価して今後の方針を決めるプロセスが明記されました。

