なぜ手術を頼んでしまったのか

遺族アンケート

70歳夫/看取った人・妻/千葉県/2025年回答

突然転倒した夫は、酔っぱらって寝ていると思われたまま一晩放置されていました。病院に運ばれた時は、医師から「よくても植物状態でしょう」と説明されました。その時私は「どうせ死ぬなら、手術して血を抜いてください」とお願いしてしまいました。幸い無事に手術は行われましたが、夫の意識は戻りませんでした。その後、毎日のように全身が腫れ、3日後には顔もパンパンに腫れてしまいました。その時、夫がリビング・ウイルを作成していたことを思い出し、本人が残していた書面をすぐに送っていただきました。それをもって医師と面接することができ、「本人の意思が確認できました」と言われましたが、現在の処置はそのまま継続しないといけないが、少しずつ薬の量を減らします」との説明を受けました。その時は、すぐに楽にしてあげられないのかと少しがっかりしました。しかし翌日、顔に貼ってあったテープをはがしてくださったり、点滴の量を減らしてくださったりしました。すると、夫の顔が本人の顔に戻り、ひげなども剃ってあげられました。その日のうちに、血圧が下がり、夫はようやく最期を迎えられました。

もしあのままだったら、あと何日も生き続け、毎日膨らんでいく身体を見ながら、「なんで私は手術してくださいと頼んでしまったのか」と、今以上に自分を責め続けていたと思います。

尊厳死協会に入会していて、本当によかったと感謝しています。ありがとうございました。この経験から私は、周りの人へも尊厳死協会への入会を勧めています。

協会からのコメント

予期せぬ突然の事態に直面し、慌てて手術をお願いしてしまったご自身を激しく責められたお気持ち、痛いほど伝わってまいります。しかし、そこでリビング・ウイルの存在を思い出し、それを医師に提示できたことが大きな転機となりましたね。薬を減らす決断によってお顔の腫れが引き、ひげを剃ってご本人の顔を取り戻した状態でお見送りができたこと、本当によかったです。残されたご家族が後悔に苛まれ続けることを防いでくれたリビング・ウイルの力を、改めて実感する「看取りのエピソード」です。

開始された医療処置を中止するのは、まだまだ困難な医療例が多いなか、実際に尊厳死が叶えられた例として、多くの人々の希望になることを願いたいものです。

ご冥福をお祈りいたします。