病院の倫理委員会にかけられました

遺族アンケート

99歳父/看取った人・娘/東京都

約7年前(92歳)の入院時、内科の医師には胃ろうを勧められ、おことわりしようとリビング・ウイルを提示したところ、病院の倫理委員会にかけられ、否決。迷いながら胃ろうを1か月間お願いしましたが、結果また食べられるようになったり、経口が無理な時の薬の摂取が可能になったりしたので良しとしました。今回の入院では、最初からリビング・ウイルを提示。医師とのコミュニケーションもスムーズでした。家族が迷わないためにも、リビング・ウイルの存在はありがたかったと、感謝申し上げます。

協会からのコメント

リビング・ウイルは命を放棄するものではありません。無駄に苦痛を引き延ばすことなく本人の尊厳を守るためにあります。胃ろうが全て無駄な延命治療になるわけではありません。さらに、リビング・ウイルは病状が『不治かつ末期』と診断・説明され、関係者の納得が得られた時に効力を発揮します。単純に年齢で決められるわけでも、本人・家族の意思表明だけで決定されるわけでもありません。しかし、結果がどうであれ、倫理委員会にかけられる場合でも、本人及び家族の意思が表明されることは大事で必要なことです。

ただ、家族はマニュアル通りに医師が胃ろうを勧めているのではないか? ということに敏感なのだと思います。だからこそ、医療者からの回復の見通しの説明が充分にあり、患者・家族と医療者の双方向のコミュニケーションの質が問われるのですよね。 

7年前(92歳)に入院した時の病気や病状がわかりませんが、病院の倫理委員会で検討し、病状の回復が望める状態だったように思います。今回の入院は「回復の見込みが望めず、本人の希望を尊重した」ということでしょう。 

この「看取りのエピソード」は、チーム医療体制をとる病院だからこそ誠実に対応できたモデルケースだと思います。リビング・ウイルへの対処のモデルケースとして、広く多くの方々に知っていただきたいケースです。同時に、これが、在宅訪問医師による対応ならまた違っていたでしょう。家族として、どの医療機関、及び医師を選択するか? その選択肢が広がっているのだと理解していきたいものです。
そのためにも、今、病院のシステムがどうなっているか? チーム医療体制の中での医師の立ち位置や、病院の倫理委員会が果たす役割などについて、生活情報としてあらかじめ知っておく必要がありそうです。そのための理解の一助として「小さな灯台」内の情報BOX【病院の倫理委員会】についても、ご参照ください。