自宅近くのリビング・ウイル受容協力医師をメモ

遺族アンケート

79歳夫/看取った人・妻/埼玉県/2022年回答

2022年7月発行の会報「リビング・ウイル」No.186に掲載されていた「リビング・ウイル受容協力医師」に、自宅にとても近いところがあったのでメモしておきました。

入院先より「もう病院での治療は無理なので」と言われ、以前よりリビング・ウイルのお話をしていたので、病院から上記のリビング・ウイル受容協力医師(在宅医)と、町役場へ連絡していただき、10月7日の退院時から先生、看護師さん、ケアマネジャーさんと連携をとりながら12月3日まで介護をいたしました。月・水・看護師さん、金・先生と看護師さん、土・自宅入浴。そのあい間にケアマネジャーさんが来て細かなことを教えていただき、夫もとても満足のようでした。私の体も皆さん大変心配していただき感謝でいっぱいでした。二人の息子も毎週帰宅し夫が起きたい、足が痛いと言うと抱っこしてリビングに連れて行ったり、なでたりと、世話をしていました。夫も甘えているように思えました。夜もあまり休むことができませんでしたが、頑張る姿を子どもたちに見せられたことは宝物となりました。

協会からのコメント

終末期と知って、ご本人と家族がどこで、どう過ごしたいのか? いずれにしても情報は必要で、その情報を、どこでどうやって得れば良いのかを知ることはとても大切です。 

大学病院および急性期病院等の入院先から「もう病院での治療は無理なので」と言われ、「不治かつ末期」であることを告知された後「ご家族が状況をどう受け容れるのか?」「終末期を自宅で過ごすというのはどういうことなのか?」さらに「受容協力医師の対応や在宅での過ごし方」がよくわかるエピソードです。

何よりご家族がお父様をどれほど大事に思われていたかがよく伝わってきます。

今、「終末期を迎えた親を大切にする」ということが具体的にはどうすることなのか? がわからない人が増えています。大学病院から「これ以上は無理」と言われたことを「見捨てるのか?」と怒るご家族。自宅で看取る時の「地域包括ケアシステム」の仕組みを説明しても、「死ぬまでの期間は何日? 何か月? その間のお金がいくらかかるか見積もりが欲しい。複数の事業者の相見積もりをとるので、比較検討する資料をください」とビジネスライクに迫るご家族。「こんな重症患者を自宅に引き取るなどとても無理。どこでもいいから入院できる病院を探してくれ」と懇願するご家族。そうこうする間に残された貴重な時間が過ぎてしまう多種多用な実例を、今、退院調整担当者(ソーシャルワーカー等)や医療関係者たちは日々経験しています。まさにケースバイケースで対応を模索中なのです。

命の始まりであった「家族」が、命の終わりをも見届けられる「家族」として機能できるようにすることを目標にしている「地域包括ケアシステム」の実際をもっと多くの人に知ってほしいと願います。

 「頑張る姿を子どもたちに見せられたことは宝物」という受け容れ方をされたご家族の感性に共鳴します。命の終わりを見届ける勇気をもったご家族のエピソードとしてご紹介できることを「小さな灯台」の誇りとしたいと思います。ご主人様のご冥福とご家族の皆様の健康を心よりお祈りしております。

編集部注:

※ビジネスライクは、成果を競い合う世界で効果的な論理的合理的な考え方。予定的計画的にものごとをすすめることを重視するため、育児・介護のような予定がたたないことを受け容れにくい傾向があります。一方、関係性を育て癒しあう世界で効果的な情緒的考え方をマザーリングライクといい、看取りの世界ではマザーリングライクな姿勢が欠かせません。「ビジネスライク」「マザーリングライク」はどちらも重要なコミュニケーションの2面性で、そのバランスを意識することで人生が豊かになります。