無理解と葛藤を越えて貫いた意思
遺族アンケート
92歳母/看取った人・娘/埼玉県/2024年回答
通院治療→在宅治療→入退院→施設への入所と、全ての段階でリビング・ウイル会員証を示すことで意思疎通がスムーズに行えたことが多かった。
特に半年ごとの血液検査で急に数値が悪化、在宅治療に切り替えてからは透析が必要なほどの数値になっていたものの、これ以上だらだらと生きたくはないとの本人の希望と、食べることだけが楽しみだった母の生活を考え、自然に任せ、食事も普通食で通せたことも良かった。
母はとにかく外面だけは良く、良い人、良いおばあちゃんでいたい、足並みを揃えたい、という生き方に必死で、家族を守るために外では決して「ノー」と言わない人だった。そのストレスを全て家庭内で自分がボスになることで発散し、私に対してずっとモラハラまがいで接する人だった。
母の介護に関わってくださった多くの関係者の方は、リビング・ウイルについて理解をしてくださったが、1度目の入院で担当した医師一人だけの無理解によって私はさらに傷ついてしまった。その医師はかなりのお年で、その年代の人はいまだにリビング・ウイルや家庭内ハラスメントに理解がないのだなと暗い気持ちになった。
協会からのコメント
リビング・ウイルという「ものの考え方」や「生き方の選択」が社会的に認知され、若い世代の医療介護従事者たちによって理解ある受け容れが浸透してきていることがわかる「看取りのエピソード」です。
その一方で、昔の古き良き時代のコミュニケ―ションのまま(今はモラハラと言われる時代)を貫き通されるご高齢の医師がいらっしゃるのも確かです。
「家族であれば全てうまくいく」のだという家族至上主義的な思い込みは、すでに幻想です。むしろ家族だからこそ、他人や専門家が介入しにくく、さまざまなハラスメントが起こりやすくなっています。
また、特に介護関係ではさまざまなハラスメント(力・言葉・態度の暴力、金銭・時間・居場所の束縛など)が起こりやすく、当事者が声を上げにくいことも問題を複雑にしています。
そうしたことから近年、医療関係だけでなく社会・福祉など、多方面の研究者たちの研究によって、それらは「家族の闇」として専門家の間で詳細に解明されてきています。
こうした状況だからこそ、本人の意思=リビング・ウイルを明確にして、家族だけではない、社会的なサポート(明るい解決策)が求められ、そこで構築されたのが地域包括ケアシステム(【情報BOX】在宅介護を支える「地域包括ケアシステム」とは? (2023年6月30日)をご参照ください)なのです。
それには、介護保険制度が果たした「介護の社会化」が、とても大きな意義をもちました。
ご投稿からはハラスメントの内容までは伺いしれませんが、きっとつらい経験を重ねられたこととお察しします。本当に大変でしたね。この経験を「開放された、新しい出発」と受け止めて、これからの人生に生かしていただけますよう、心からお祈りしております。

