【情報BOX】在宅介護を支える「地域包括ケアシステム」とは?

◎「地域包括ケアシステム」ってどんなシステム?

在宅介護にはさまざまなサービスがあります。例えば、訪問看護や訪問介護など自宅まで訪問してくれるサービスは、皆さんも身近に感じられるのではないでしょうか。他にも、通院するかかりつけのクリニックやいざという時の入院先となる病院、状況によって一時的に利用できる高齢者介護施設のショートステイなどもあります。

こうした医療・介護サービスは単独で提供されているわけではなく、実はそれぞれの施設がお互いに連携をして一緒に地域の高齢者を支援していくシステムになっています。そのシステムのことを、「地域包括ケアシステム」と呼んでいます。

日本は高齢化が進んでいて、65歳以上の人口は現在3,500万人を超えています。2042年には3,900万人でピークを迎え、その後もその割合は増えていくと予測されています。そのような中で、地域包括ケアシステムは団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに国によって考えられました。図1

住まいを中心に、病気になったら急性期の病院やかかりつけ医などの「医療」、介護が必要になったら訪問看護や訪問介護のような家まで来てくれる(在宅系)サービスや施設・居住系サービスなどによる「介護」、老人クラブや自治体などの元気に暮らすための「生活支援・介護予防」が生活を支えるイメージです。そしてこのサービスの要となるコーディネーター役をしているのが、地域包括支援センターやケアマネジャーです。訪問医師・訪問看護師・訪問薬剤師・介護ヘルパー・通所や訪問の理学療法士などたくさんの職種によるサービスを、ケアマネジャーの采配のもとに組み立てて、提供します。

 また、地域の特性を生かして、それぞれの自治体が主体的につくり上げていくことも特徴です。目安として、30分以内にそれらのサービスが受けられるような日常生活圏、具体的には中学校区を想定しています。

◎システムの土台は「本人の選択と本人・家族の心構え」

 このシステムが目標としているところは、高齢者の尊厳を保つことと、なるべく長く自立した生活を営めるように支援することです。重い介護状態になってしまっても、住み慣れた地域で最後まで自分らしい暮らしが続けられるように、「住まい・医療・介護・予防・生活支援」などの地域のサービスが包括的に支援できるように設計されています。

 図2はこのシステムの構造を示していますが、たくさんのサービスの土台を「本人の選択と本人・家族の心構え」としているところが特徴です。本人の選択が第一にあり、それによって本人と家族がどのような心構えを持っているのかが、このシステムの根底にある「皿」に例えられています。住まいを「植木鉢」に、その中で展開される介護予防と生活支援を「土」に、専門的な医療・介護サービスを「葉」に例えています。「皿」や「植木鉢」がしっかりし、「土」が養分を蓄えていたら、「葉」もしっかりと大きく育つ(良い影響を与え合いながら効果的に関われる)というイメージにとらえられると思います。

そして、現在は次の段階として、各地域でITを活用して本人の情報やカルテを各機関が共有できるように整備が進んできています。

 このような仕組みによって、たくさんの専門家が本人の選択をかなえられるように支える体制ができあがっています。介護サービスを利用することで、本人もご家族も暮らしのリズムが整い、病状も安定して穏やかな時間を過ごすことが可能です。

参考文献
厚生労働省:地域包括ケアシステム
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/