「胃ろうは不要」-家族の迷いを救った母の意思

遺族アンケート

93歳母/看取った人・娘/栃木県/2025年回答

私も妹も尊厳死協会の会員です。日頃から弟も含めて、看取りについて話し合っていました。介護が必要になった時にサ高住(注)(サービス付き高齢者向け住宅)から同じ建物の中にある介護付フロアに移り、施設長(医師)と面談をしたときに、リビング・ウイルを提示して母本人の希望(意思)を伝えました。今年の誕生日が過ぎたころ母は急激に体力が衰え、ほとんど食事をとらなくなりました。再度施設長と面談をした時に、胃ろうや点滴をすることもできると言われました。しかし、延命措置は本人が希望しないことは子供たち全員が納得していることを伝えました。

母はベッドに横たわったままでしたが、子供や孫が会いに行った時には目を開けて少し話もできました。苦しまず穏やかに旅立ったことは、本人も、家族も良かったと言えると思います。母が、自分の意思をはっきり示してくれていたので、迷うことはなかったのですが、そうでなければ、食事ができなくなった時点で、胃ろうなどの処置を必要ないと自信をもって言うことができたかどうか。弱っていく本人を見るのはやはりつらく、心が揺らいだと思います。

協会からのコメント

93歳になるご本人がご自身の意思を明確に示されていたことが、ご家族皆様の大きな支えとなった様子が伝わる「看取りのエピソード」です。

いざ食事がとれなくなったとき、目の前で弱っていくお母様を前に「胃ろうや点滴もできますよ」と勧められて「胃ろうは不要」と決断することの重圧は計り知れません。

こんな時こそ、大切なのは「人間の生理に基づいた情報」ではないでしょうか? 尊厳死協会では、繰り返し「食べられなくなるというのは、体が必要としなくなるからです」とお伝えしています。そのことを選択の基準にしていただければ、苦悩も少なくなるはずです。ご家族皆様が納得し、穏やかな旅立ちを迎えられたことは、自らの意思を遺してくれたお母様からの最高の贈り物だったのではないでしょうか。

命の灯が消えていく様子を見届けるという崇高な役割を果たされたご家族の勇気を心から讃えて、ご冥福をお祈り申し上げます。

編集部注)
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは、安否確認(見守り)と生活相談のサービスが受けられる、高齢者のためのバリアフリーな賃貸住宅で、国土交通省・厚生労働省が所管する「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」に基づいた、高齢者のための住宅です。