鹿児島共済会南風病院 高齢者・健康長寿医療センター長様から、小さな灯台に寄せてメッセージをいただきました。
看取り期の医療接遇-「小さな灯台プロジェクト」への期待
「安全・安心・思いやりのある医療」を達成するために、東大病院に接遇向上センターが設立されたのは2006年(平成18年)4月のこと、私はその初代センター長に就任しました。病院は病む人である患者様を「癒す」ことを目的としている以上、世の中のどの組織よりも「接遇」に注意が払われてしかるべきでしょう。そこで、私たちは医療接遇を「医療の接遇は、ハートを研鑽しそれを的確に患者・家族に伝えるスキルを体得すること。勇気と希望と感動を与えるハートとスキルが融合してはじめて接遇が完成する」と定義づけました。
医療接遇の視点から看取りを考える
そもそも接遇は「人を迎えてから送り出すまでの一連の行動」です。そのキーポイントの一つが「送り出すとき」です。病院を送り出すときは退院・転院などもありますが、お亡くなりになる患者様をよりよく送り出してさしあげるということもとても重要です。この看取り期における医療者の「言葉と態度」は、ご家族を亡くされた遺族の哀しみを和らげるという意味でも、その後の遺族のグリーフや人生に大きな影響を与えます。
現在は、看取り期の対応は、医療者各自の裁量で行われています。今後、多死社会を迎えるにあたり「よりよい看取りの事例」を研究し、情報交換をしていく必要があります。医療者・患者・家族ともに事例材料が乏しい中で、患者家族の視点でつくられたサイトである「小さな灯台プロジェクト」の【看取る医療者への家族の思い】に掲載されているエピソードは、遺族の気持ちを知る上で貴重です。私たち医療者が研鑽を重ねることで、一人ひとりの患者様ご家族にとって「自分らしい安らかな最期を迎え、家族の負担も和らげる看取り」に近づいていけると思います。ひいては、広く看護・介護に携わる人々の迷いや後悔を少なくすることにもつながるのではないかと期待しています。
鹿児島共済会南風病院 高齢者・健康長寿医療センター長
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院前院長 顧問
東京大学名誉教授 医学博士
元東京大学医学部附属病院初代接遇向上センター長
大内 尉義