入浴後のかき氷に「極楽だなぁ」と、庭に出て「空が青いなぁ」と

遺族アンケート

91歳夫/看取った人・妻/愛知県/2021年回答

夫が亡くなる1年ほど前、病院の先生から、胆管ガンと宣告され、放射線治療をすれば2~3年生きられる、しないと1年と言われました。夫はきっぱりと治療を断りました。先生はこの病院では緩和ケアはできないので、末期になったら別の病院のホスピスに入るように紹介してくださいました。その後、状態が悪くなった際、運よくホスピスへ入ることができました。ホスピスは想像以上に環境が良く、部屋のベッドから美しい庭を眺めることができ安心しました。医師には、夫が尊厳死協会に入会していること、延命治療はしないという信念をもっているとお願いし、その気持ちを受け止めていただきました。

ホスピスでは治療のせいかあまり苦しむこともありませんでした。しかし、次第に食事がとれなくなりましたが、夫は点滴も断りました。それでもお風呂へ入れていただき、かき氷を食べた時「極楽だなぁ」と言ったのでほっとしました。亡くなる2日前、緑いっぱいのお庭へベッドごと家族と散策することができ「空が青いなぁ」と言った言葉がしっかり記憶に残っています。2日後、私の手を握り、苦しむことなくあの世へ旅立ちました。

病院の医師、看護師の皆様、いたれりつくせりで、いい人々に助けられ感謝しています。私は1日でも長く生きてほしいと願っていましたが、ガンと向き合い、苦しい思いをして長く生きるより、これで良かったかもしれないと、夫の潔さに感心するばかりです。

協会からのコメント

病気を知り、治療を断り点滴を断り、延命治療はしないというリビング・ウイルの意思表明がうまく機能した「看取りのエピソード」をご紹介できることは、本当にありがたいことです。

「小さな灯台」は、リビング・ウイルが機能しなかった残念なケースをお伝えすることも大切な役割です。一方、うまく機能した時のモデルケースをご紹介できることは「尊厳ある最期」がどのようなものなのか、多くの人々に知っていただけるとても意義あることです。

 入浴後のかき氷に「極楽だなぁ」、ベッドで庭に出て「空が青いなぁ」と素敵な記憶を残して旅立たれたご主人、それを見送った奥様、素晴らしいご夫婦だなぁと思います。

ホスピスは心地よい日常生活を送るところで、ただ死を待つところではないということが実際によくわかります。広く、医療・ケア職の皆様にも一般市民の皆様にも知ってほしい「看取りのエピソード」です。 

嬉しい投稿をありがとうございました。くれぐれもご自愛ください。